2012年3月16日金曜日

リスクにはフェーズわけで迅速対応 ⇒ 復興・再生は元に戻すのではなく新しい未来を目指す

リスク、つまり具体的な損失が発生したときの対応については、かなり深い議論が必要です。議論が深くなければ、表面的な対応しかできず、リスクマネジメントが機能しなくなってしまうからです。では、どういった観点で議論を深めていけばよいのでしょうか。その観点を整理してみます。

2011.03.27宮城県石巻市災害復興と街の様子 / 湯川伸矢(しんじょん)



  フェーズわけして整理するリスク対応策 ⇒ 安全・安心確保までは迅速に
具体的にはリスク発生後の対応を考えるに当たっては、時間軸でフェーズわけを行い、整理していくことが必要です。もちろん、これらの加えてリスク発生前のハザード(原因)の予防、ペリエ(事故)の回避・抑制も必要になります。

・初動対応
 リスク発生直後の対応です。
 災害発生時は救命・救急が該当します。
 とにかく被害を最小限にとどめるための対応策を検討します。

・安全確保
 2次被害の発生を防ぎます。
 災害発生時は、被災者を安全な場所に避難させます。
 具体的な被害が及ばない場所を確保するための対策を検討します。

・情報確保(状況把握・混乱回避)
 安全を確保した後は混乱を防ぎます。
 そのためには情報を確保し、状況把握することが必要です。
 災害発生時は被災状況、被災範囲などの把握です。
 この情報を把握することで、具体的なアクションを選択可能になります。
 なお、このとき100%すべての情報は確保できません。
 限られた情報から、可能な限り迅速に適切に判断することが求められます。

・暫定的復旧
 情報を確保したら、迅速に対応を始めなければいけません。
 まずは最低限必要な機能の復旧を行うことが必要です。
 災害発生時であれば最低限のライフライン(水・電気・ガス)の確保です。
 このとき、一から何をやるかを考えるようなことがあってはいけません。
 必要なアクションは“選択”するだけの状態であるべきです。
 つまり、暫定的復旧措置として対応すべきアクションを事前検討し、リストアップしてマニュアルになっていることが必要なのです。

・安心確保(メンタルケア)
 リスクが発生した場合、被害を受けた人びとは少なからずショックを受けます。
 不安のある状態が長続きすると、復興・復旧が停滞することにつながります。
 したがって、被害者の心理的な不安を取り除く方法を検討しておくことが必要です。

・恒久的復旧
 暫定的復旧の後は、必要機能を本来のレベルで復旧することが求められます。
 災害時であれば、水道管の修理、電線の修復などが該当します。
 この恒久的復旧については、確保した情報を元に具体的な計画に落とし込んで実行します。
 つまり、恒久的復旧に向けての計画を立てるための方法論を準備しておくことが必要になります。

・復興・再生
 復旧は、あくまでも機能面での復旧です。
 リスク発生前の状態に戻すためには、機能面ではなく活動面でのケア、つまり復興・再生も必要になります。
 災害発生時であれば、地域の経済活動、日常生活を災害発生前の状態に戻さなければいけません。
 この復興・再生は非常に時間がかかります。
 したがって、恒久的復旧を行いながら、具体的な復興・再生策を検討できるよう、やはりその方法論を準備することが必要となります。


  最後に:復興・再生をチャンスに変える力を
リスクが発生すれば、当然大きな損失を被ることになります。これは避けることができません。しかし、その損失を受けてそのままで終わってしまうわけにはいきません。なぜなら、損失を受けたままにしていては一向に何も前には進まず、状況は悪化し続けるためです。では、どうするか。答えは、復興・再生をやり遂げることにあります。

このとき、単に“元にもどせばいい”というわけではありません。目指す姿はリスク発生前ではなく、それを越える未来です。なぜなら、リスクが発生してその対応を行っている分、時間をロスしているからです。リスクが発生しなければ、当然そのロスした時間の分、世の中の流れにあわせて発展しているはずです。つまり、単にリスク発生前の状態に戻すだけでは、世の中の流れに遅れをおっていつまでも本当の意味での復興・再生につながらないのです。

「創造的破壊」という言葉があります。何か新しいものを生み出すためには、時に今あるものを壊すことが必要なこともあります。リスクの発生は好ましいものではありません。しかしながらその現実を受け止めることができれば、イノベーションへのきっかけとしていくことができるのではないでしょうか。復興・再生を新しい未来へのチャンスに変えることができるのではないでしょうか。苦しい選択ではありますが、前を見て、進んでいかなければいけないのです。