2013年2月3日日曜日

スマートシティで変わるビジネスの仕組み ⇒ ”ソーシャル・エクスペリエンス・デザイン”へ

”スマートシティ”をテーマに扱っていると、一つのことに気づきます。それは、お金を稼ぐための仕掛けが相当に変わってきているということ。いいものをつくればいい、マーケティングをすればいい、といった話だけでは、”スマートシティ”の世界観では通用しないのです。

六本木ヒルズ  Tokyo city view(Sky Deck)_01 / Span X


  スマートシティは”理想のまちづくり” ⇒ まちには”お金”が必要なのです。
まず、スマートシティとは何かというと、至極端的に言えば”ICTを活用した、持続的で災害に強い、豊かなまちづくり”といったところです。もっと平たく言えば、“理想的なまちづくり”でしかありません。スマートシティという言葉は新しいですが、昔からあるまちづくりの延長でしかないのです。したがって、よく言われるエネルギーの話はごく一部であり、交通や医療、教育など、まちに必要な機能全てが対象になります。当然、経済的なシステムも必要になります。お金が必要です。スマートシティはボランティア活動ではないのです。


  従来の稼ぎ方では通用しない? ⇒ マーケティング3.0、協創の時代へ
スマートシティでは
 ・持続可能性
 ・災害への強さ
 ・豊かさ
を同時に実現しなければいけません。平たく言ってしまえば、“みんなHappy”な状態でなければいけないのです。となれば、一方的なビジネスは嫌われ、淘汰されていきます。社会的に意義があるものでなければ生き残れないのです。もちろん、短期的には収益を上げることは出来るかもしれませんが、それは持続性がない、ということになるのでスマートシティにはふさわしくないわけです。

プロダクトアウト的なアプローチはすでに限界を迎えています。自分たちがつくったものを顧客に押し付けるのでは、顧客は逃げていきます。マーケットイン的なアプローチも衰退期です。顧客を分析して必要としているものを創っていく、という分析的なアプローチはただの過当競争になるだけです。ロジカルな分析を繰り返していけば、ライバルは皆同じ答えに行き着きますからね。

そこでこのところコトラーが唱えているのがマーケティング3.0です。提供者と顧客が相互に意見を交わし、本当に求める新たな価値が何かを見つけ出してビジネスにする、協創型のアプローチです。ピータセンゲの「出現する未来」や、オットーシャーマーの「U理論」みたいなアプローチです。ちなみにここでいう提供者は企業とは限らず、自治体や個人なども含まれます。顧客についても同様です。B2BやB2Cだけでなく、B2G、G2B、G2C、C2B、C2G、C2Cなどなどのバリエーションがどんどん増えているので


  狭い視野では見つけられない大きな価値 ⇒ ソーシャル・エクスペリエンス・デザインの必要性
マーケティング3.0は、当面潮流となるでしょう。ここでスマートシティに関わっていると一つの気づきがあります。それは、提供者と顧客、という観点だけで見るとビジネスがデザインしきれないのです。なぜなら、スマートシティを考えるときには、当該のビジネスがどのような影響を与えるのかを考えなければいけません。いわゆるバタフライ効果を考える必要があるのです。ほんの少し何かを変えただけで、とんでもない問題に波及することもあるからです。

また、必ずしも商品やサービスを提供した相手からお金がもらえるとも限らないからです。いわゆるIDPU(影響者・決定者・支払者・利用者)の各要素が異なるからであり、それが当たり前だからです。

そこで必要になるのが、ソーシャル・エクスペリエンスだと考えています。社会全体の体験です。社会のエコシステム、といってもいいかもしれません。社会として本当に求める価値が何か、社会に参加することで得られる体験はなにか、というところをトータルにデザインすることが必要なのです。しかも持続的に、災害にも強い状態で。

そして、その目指すべき社会に対して、自らが(企業も、行政も、個人も)どこにポジショニングして、何に貢献し(何の価値を提供し)どこから収益を得ることが出来るかをデザインしていくのです。マーケティングでいうセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングを社会レベルから整理する、ということが必要なわけです。もちろん、ビジネスとしての持続可能性が必要なことは言うまでもありません。

そうすることで明らかになった提供価値を具体化していくこと=ユーザ・エクスペリエンスをデザインしていくことで、ビジネスが可能になってきます。ソーシャル・エクスペリエンス・デザインが必要だと入っても、具体的に顧客が触れる価値が明らかにならなければ、ビジネスとしては成立しませんし、現実的にお金を稼ぐことは出来ませんので。いわゆる4Pや4Cと言われる領域です。これも社会レベルから落とし込まれなければいけないわけです。

ただし、このとき独りよがりでソーシャル・エクスペリエンスをデザインし、落とし込んでいっても意味がありません。それは単なる“想像の産物”でしかないのです。社会にはいろいろな意見があります。全てのプロセスにおいて、多くの意見を組み入れていく必要があります。いわゆるオープンイノベーションのアプローチが求められるわけです。


  まとめ:つながりが競争力の源泉になる時代
ソーシャル・エクスペリエンスをデザインすることは、ビジネスを行ううえで重要な要素になってきそうです。これを自分のビジネスに落とし込んで、社会に貢献する形で収益を上げられる仕掛けを作る、ということが求められるわけです。このとき、社会という観点を扱う以上、様々な観点を組み込まなければ、よいデザインにはなりません。オープンイノベーションが必要になります。閉じた組織ではできないのです。仕事の枠、組織の枠、常識の枠を超えて、あらゆる制約を越えてつながっていってこそ、初めて価値の高い洗練されたソーシャル・エクスペリエンスがデザインでき、社会に支持されるビジネスが創造され、真の意味でのスマートシティを実現できるのです。