2012年7月10日火曜日

石巻・気仙沼・陸前高田の今② : 伝え続けるために必要なこと ⇒ ニュースを作るということ


石巻・気仙沼・陸前高田。幸いなことにただ現地を見るだけでなく、現地の方ともお話することが出来ました。2日間だけでしたがこの貴重な時間を通じ、考えの甘さ、現実の厳しさ、人の強さを感じました。


  メディアでは伝えないこと ⇒ 十分に深刻な問題
東日本大震災が起きた2011年3月11日。あれから1年4ヶ月がたちます。被災地の情報が、被災地以外のテレビや新聞で伝えられる機会は徐々に減っていっています。報道されるのは主に原発の問題。それはあたかも原発以外の問題は終息に向かっている、問題としての重要性は下がっているかのように受け取れてしまいます。

しかしながら、実際に現地に行けばそれが誤った認識であることはすぐにわかります。まち中から瓦礫は撤去されています。仮設住宅や仮説店舗もできて、生活の基盤はある程度できあがってきているように見えます。ですが、実際には
 ・集団移転の場所が決まらない
 ・土地の評価額が二極化、個人所有の土地資産の評価減
 ・仮設住宅を設置しているエリアが生活に必要な商業施設から遠い
 ・人口の流出が続き高齢化が加速している
 ・土地の利用方法、震災モニュメントの残し方で住民合意が取れない
 ・地域雇用が不足している、地域産業が再スタートできてない
といった問題は確実に存在しています。

もちろん、原発事故の問題に苛まれる福島はより深刻です。しかし、福島以外の被災地が今現在抱えている問題も十分に深刻であることは間違いありません。


  なぜメディアは伝えないのか ⇒ ニュース性の低下という問題
ではなぜ、メディアは被災地の情報を伝えなくなっているのでしょうか。その答えはシンプルです。ニュース性がなくなってきているからです。ニュース性がなくなってきている、ということはつまり視聴者や購読者を“はっ”と驚かせるよな話題でなくなってきているからです。

メディアを批判するわけではありませんが、現在のメディアは人の生き死にであったり、衝撃的な事件・事故であったりと、視聴率や発行部数が伸びる話題を中心にすえます。平たい言葉で言えば、メディアは“派手”なトピックを好みます。一つの問題を継続して捉え、持続して事実を伝えるというアプローチは少なくなっています。

この背景にはメディアも民間企業であり、収益をあげなければいけない、という点が上げられます。収益を上げるためには視聴率獲得や発行部数UPは必須要件となるからです。

集団移転の問題も、雇用の問題も、高齢化の問題も、地域にとっては重要な問題であり、簡単に解決できる問題ではありません。しかし、その解決には時間がかかります。余程のブレイクスルーが無い限り、こうしたメディアが取り上げるほどのニュース性を得ることは難しくなっている、というのが実情なのではないでしょうか。

ちなみにすべてのメディアが伝えなくなっているわけではありません。東北で展開するメディア、たとえば河北新報などは毎日のように今も震災関連のニュースを配信しています。関心があるのであれば、こうしたニュースメディアをユーザ自らが選んで、情報取得するというアプローチは出来るわけです。


  被災地の今を伝える方法 ⇒ ニュースを作るという支援
河北新報のように被災地のニュースを今も伝えているメディアはあります。しかし、多くの人は普段見ているテレビや新聞から情報を取っています。つまり、在京キー局のニュースに取り上げられたり、全国紙や被災地以外の地方紙に取り上げられなければ、もともと継続的に関心のある人たち以外に被災地の情報は届かなくなります、そしてその状況が続けば、被災地の実情と多くの人びとの認識がずれていくことになってしまいます。

では、どうすべきか。その一つの答えとして提案できることが、ニュースを作る、ということ。待っていればそのうちニュースが出てくるかもしれません。しかし、運任せにするのではなく、自らの手で作り出すことも出来るはずです。例えば、新しいビジネスモデルを東北で起こして経済系のメディアの注目を集める、ドラマのロケーション地にする、有名な歌手にライブイベントをひらいてもらう、東北発の流行を作る。もちろん、簡単ではありません。この程度の策であれば、地域活性化として考えられていたレベルでしょう。それを超えて、地域のブランディングを強く印象付けるようなニュースを作っていくことが求められます。

だからこそ、東北のことを想う人たちの力が必要です。日本各地から知恵を持ち寄って形にしていく、というアプローチが必要になってきます。最初は小さくても、それを積み重ねて大きくしていけばいいのです。

今後も東北への支援活動や復興事業などは進んでいきます。関わる企業も人も増えていくでしょう。そのときの共通テーマ・共通目標として、全国メディアのニュースとして取り上げられるだけの話題を作る、というものを意識することが必要なのかもしれません。もちろん、話題に見合った活動内容にすることは前提として。