スマートシティという言葉を最近耳にする機会も増えてきました。しかしながら、このスマートシティ、電力やITばかりに意識が向いており、それ以上の可能性についての議論が少なくなっています。スマートシティを考えるのであれば、より広く、可能性に踏み込んでいく必要があります。
スマートシティとは ⇒ 人びとが豊かに暮らせるまち
そもそもスマートシティとは何でしょうか。そのためにはスマートの意味を考える必要があります。スマートとは直訳では“活発な”、”賢明な”、”頭の良い”といった意味があります。しかしここで使われる言葉の意味としては“最適な”というものがふさわしいでしょう。では、何に対して最適なのか。それは シティ=まち に暮らす人びとであり、安心・安全が確保されていて、利便性を感じることができ、一人ひとりが豊かさを感じれるようにすることです。そのために必要な行政や企業のサービスをまち全体で構成することであり、日本では“スマートコミュニティ”とも言われます。
最適にするだけでは不十分 ⇒ サステナブルなまちに
エネルギー枯渇の問題がクローズアップされたことでスマートシティには一つの意味が加えられました。それはサステナブル、持続可能性です。豊かに暮らせるまちをつくっても、その豊かさが一時のものでは意味がありません。これはエネルギー問題から出てきた考え方です。エネルギー供給が途絶えてしまえば、現代の社会生活は継続できません。となれば、いかにしてエネルギー供給を維持するかが議論になります。単純に化石燃料を消費するのではなく、再生可能なエネルギーを確保してその供給を持続させる。この考え方をエネルギーだけでなく、経済活動や社会制度などにも適用していくことが求められています。なぜなら将来にわたり機能を継続できなければ、豊かなまちも一夜の夢に終わり、将来に禍根を残してしまうことすらあります。
東日本大震災からの教訓 ⇒ レジリエントに
東日本大震災もスマートシティに新しい概念をもたらしました。それはレジリエント、復元力です。どんなに豊かなまちで、その豊かさを基本的には持続できたとしても、ひとたび災害が起きれば多くの機能を失ってしまいます。そしてその復元に時間がかかればかかるほど、まちで暮らす人びとは多くの負担を強いられることになります。雇用も維持できなくなり、経済も低迷し、人口が流出して、下手をすればまち自体がなくなってしまうかもしれません。このリスクを回避するためには、災害時にいち早く復元できる力が必要になります。
・災害発生時の被害を最小化する
・被害を受けた場合のバックアップ手段を用意する
・被害からの早急な復旧を可能にする
といった方策を行うことが必要になります。当然、エネルギーなどのライフラインの問題だけでなく、まちとしての活動=経済活動・社会活動を復元することを念頭におく必要があります。
まとめ:スマートシティは豊かなまちを作る都市計画
スマートシティの持っている意味を整理していくと、それは“人びとが豊かに暮らせる、災害にも強い持続可能なまち”ということになります。この定義を前提にしたとき、電力やITといった要素は手段でしかないことがわかります。もちろん、スマートシティのインフラを支える部分であり、非常に重要な要素であることに間違いはありません。しかしながら、それだけでスマートシティは実現できないことも事実です。スマートシティには、持続可能な経済活動・社会活動が必要になります。そのためにはハード面だけを考えていてもいけません。経済のあり方、社会制度の在り方、人びとの生活のあり方・つながりなども含めて、豊かなまちを作るための都市計画を進めていくことが必要なのではないでしょうか。