2012年7月5日木曜日

Googleのサービス大掃除に学ぶ“事業の新陳代謝” ⇒ やめることができなければ、成長はない

Googleがまたサービスの大掃除を行うようです。新しいものを始めるということは、何かを止めるということなんでしょうね。

Stop / Ted Drake

  iGoogleも廃止 ⇒ So-Lo-Mo軸での統合へ
Googleは2012年7月3日、廃止予定サービスを発表しました。廃止されるサービスは以下の5つ。
 ・Google Mini : 中小企業向けのエンタープライズ検索サービス
 ・Google Talk  : チャット機能付きインスタントメッセージサービス
 ・Google Video : 動画検索サービス
 ・iGoogle : ガジェット式のカスタムホームページサービス
 ・Symbian Serach App : Symbian搭載端末向けアプリサービス

これに対し、新サービスも次々に発表しています。例えば、
 ・スマートフォン向けブラウザ Crome
 ・スマートフォン向けアプリ Google+ Local
 ・Google Playでのテレビ番組・雑誌配信
 ・iOS向けGoogle Docsアプリ
といったところが発表されています。といっても無作為に思いつきでサービスを提供しているわけではなく、よくよく見れば基本的な流れはSo-Lo-Mo、つまり、
 ・ソーシャル(Social) : Google+、YouTube
 ・ローカル(Local) : Google Local、Google Map
 ・モバイル(Mobile) : Andorid、デバイス開発
をベースとするサービスに集約する流れになっています。


  なぜサービスを廃止するのか ⇒ 事業の新陳代謝による成長へ
さて、ざっとこれら終了するサービスを眺めると
 ・他のサービスとの機能重複が見られる
 ・マーケットトレンドとサービス内容が乖離してきている
 ・ターゲットとユーザへの提供価値がぼやけてきている
といったあたりが見て取れます。言い方を変えれば、企業としての価値提供と利益獲得への貢献度合いが下がってきており、継続するメリットが低下してきているというわけです。これに対して新サービスが登場し、従来のサービスを包含し、さらに進化させたものとなっています。

このとき、古いサービスを残したままにしておいたらどうなるでしょうか。
 ・ユーザが新サービスに移行してくれない(たとえ素晴らしいメリットがあったとしても、習慣的に古いサービスを利用してしまう)
 ・ユーザがサービスを利用するときに迷う、理解しづらくなる
 ・ユーザ認知度があがらず、サービスとして普及しずらくなる
 ・サービス提供のためのリソースが分散し、サービス品質を向上させにくくなる
 ・結果としてユーザのニーズに応えられなくなり、ユーザ離反の可能性が広がる
といったデメリットが出てきてしまいます。

もちろん、既存サービスを残すことによって、当該サービスを利用しているユーザ利用を維持できる、という意見もあるでしょう。しかしながら、時代の潮流に合わないサービスは遅かれ早かれユーザ離反を起こしていきます。その環境変化が起きてから対応するのでは対応が後手に周り、上記のデメリットはより顕在化してきます。

そこで必要なことは自らが環境変化のトリガーを引くこと、つまり事業の新陳代謝を起こすことにあります。古いサービスを統廃合し、新サービスで既存サービスの要件を満たしたうえで新たな価値を加えたユーザビリティを提供するのです。それは、ニュース性もあり、既存サービスからユーザを誘導することで認知度も広がる可能性が高くなり、リソースの選択と集中を行った事業活動が行えるようになります。当然ながらそれは企業としての提供価値と利益獲得の可能性を高めるのです。


  まとめ:学ぶべきことは“やめることの大切さ”
この事業の新陳代謝はGoogleだからできることでしょうか。確かにGoogleは先進的なテクノロジーを持っていますし、投資にも積極的でR&D費用も売上高の13%を投資しています。これからもGoogle Glass Projectのようなウェアラブルデバイスを開発したり、セマンティックエンジンを使った直感的なコンテンツサービスを提供したりしてくるでしょう。これらの“具体的なサービス”は確かにGoogleだから提供できるものです。

しかしながら、“事業の新陳代謝”ということであれば、どの事業者でも行うことはできます。ウェアラブルデバイスを作ることができなくても、自社の事業の延長で新しいサービスを作ることはできます。レベル感は変わってきますが、業務プロセスや組織制度の改革もある意味“事業の新陳代謝”です。それは多くの企業が取り組んでいることであり、「Googleだからできる」というのは言い訳に過ぎないのです。

ただし、Googleから学んでおくことはあります。それは“やめることの大切さ”です。やめることは実に難しい選択です。始めるときよりも、周囲の関係者が増え、利害関係も生まれているため、労力が非常に多く割かれます。しかしその“やめる”ということを行わなければ、新しい成長には結びつかない、ということを理解することが必要なのではないでしょうか。そしてまず、目の前のやめるべきものをやめる、というアクションをとっていきたいものです。