2012年6月4日月曜日

BPM成熟度モデルに学ぶスマートシティ実現へのアプローチ ⇒ 成熟ステップ × 実践サイクル × 継続的イノベーション


スマートシティの実現を考えた場合、どのようなアプローチが必要になるでしょうか。闇雲にアプローチするだけではなかなか実現は困難です。そこでBPMのアプローチが一つの参考になりそうです。

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  BPMの成熟度モデル ⇒ 組織最適化のアプローチを社会レベルで応用
スマートシティの実現にはステップが必要です。それは、スマートシティとしての成熟度レベルが上がっていくことが必要、というようにもとれます。このとき参考になりそうなアプローチとして、BPM(Business Process Management)の成熟度モデルがあります。

BPMとは、業務プロセスを最適化することによって、組織の業務を継続改善し、発展させていこうというアプローチです。組織内ではトップマネジメントである経営と、実務を行う各業務部門があり、それらが連動して動かなければ成果は上がりません。つまり、プロセスが必要です。またそのプロセスを円滑に動かすためには情報が必要であり、ICTシステムが必要になるのです。

ではどうやって実現していくかというと、スマートシティと同様に一足飛びに最適化は困難です。そこでステップを踏んでいくことが必要になります。それがBPMの成熟度モデルであり、
 Lv0・混沌 : 業務が見えておらず、野放しの状態
 Lv1・見える化 : 個別の業務のアクティビティが見えている状態
 Lvl2・モデリング : 個別の業務プロセスを定義している状態
 Lv3・調整 : 業務の実態に合わせ、個別のプロセスを調整できる状態
 Lv4・統制 : 複数の業務プロセスを連携し、統制管理している状態
 Lv5・最適化 : 統制管理される業務プロセスを最適化に向けて継続的改善が行われる状態
のステップで表されます。このアプローチをまちというレベルに応用することで、スマートシティ実現へのステップを描くことが可能になります。


  スマートシティ実現への成熟ステップ ⇒ ただし実践アプローチの深彫りは必要
ではBPMの成熟度モデルをスマートシティに応用して整理するとどうなるでしょうか。
 Lv0・現状 : 現在の社会システムをそのまま利用している状態
 Lv1・見える化 : まちの電力使用状況、交通状況などの情報をセンサー等で取得して見える化
 Lv2・個別機能構築 : 太陽光設備、EVスタンド、通信基盤などの設備を設置し、個別機能を確立
 Lv3・領域調整 : エネルギーや交通などのカテゴリごとに個別機能を統合し、調整可能にする
 Lv4・都市機能統制 : まちを構成する機能領域を統合管理できる環境をつくる
 Lv5・都市間連携 : まちとまちをつなぎ、相互補助が可能な社会システムを構築する
 Lv6・持続・発展 : 複数のまちの連携を前提に、持続的・発展的に最適化を図っていく
というレベルわけで整理することができます。このレベルわけにしたがって現状のスマートシティの取り組みをみると、Lv1またはLv2の領域の取り組みが多いこともわかってきます。とはいえこれはあくまでも概念論。実践にはステップごとにより踏み込んだ議論が必要になります。


  実践に不可欠な3つの要点 ⇒ ステップごとのサイクルを
では実践レベルで必要となるアクティビティとは何でしょうか。ここで要点となるのがステップごとの
 ・実証実験
 ・ビジネス化
 ・ナレッジ・シェア
の3点です。この3点をサイクルとして繰り返し実行していくことが必要になるのです。

まず、いずれのステップでも実証実験が必要です。スマートシティは過去に例のない取り組みであり、新しいテクノロジーや社会システムを導入していくこともありますから、実行時のリスクは高くなります。そのリスクを把握し、対応していくためにも実証実験は不可欠です。そして実証が終わったらビジネスに展開し、収益性を確保して経済基盤を固めることが必要になります。また、そうして得られた知見を関連する事業者や自治体などにシェアをすることで、新たな発見・気付きを導き出し、実践はより現実的なものになっていきます。


  まとめ:スマートシティの実現の必要要素は、ステップ、実践サイクル、そして継続的なイノベーション
スマートシティの実現には見える化から持続・発展までのステップが必要であり、その促進には、実証実験・ビジネス化・ナレッジのシェアというアクティビティをステップごとに繰り返していくことが必要になるわけです。それは見かたを変えれば、最初から全ての機能を実現しておく必要は無いということ。むしろ、このステップの中でイノベーションを起こす姿勢・体制こそが実現の重要ファクターとなっていくわけです。無関係に思える領域でも、イノベーションを起こして提供価値を見つけることができれば、スマートシティの活動に参入し、急進する市場から事業機会を得ることも十分に可能なのです。