2012年6月7日木曜日

クックパッドが有料レシピ販売開始 ⇒ ビッグデータ時代の潜在課題解決はコンテンツビジネスの新たなチャンス

インターネットが普及したことで私たちは多くのコンテンツを無料で使えるようになりました。そしてSNSが広まったことで、さらにたくさんの情報を多方面から得ることができるようになっています。そしてビッグデータに直面する今、コンテンツの提供形態にまた変化がおき始めています。


  クックパッドが有料レシピ販売 ⇒ プロのレシピで新たなマネタイズ
料理レシピのソーシャル・サービスのクックパッドは2012年6月5日、プロの料理家やシェフ600名以上のレシピを購入することができるレシピストアを開設しました。このレシピストアでは料理家・シェフのレシピ20品目を抜粋した“レシピセット”を購入することができます。価格は500円から。なお、自分が欲しいレシピをリクエストする機能も付いています。レシピ購入後の利用方法は、基本的にこれまでのクックパッドの機能と同じとなっています。

もともとクックパッドはユーザによる投稿型のサービス。基本的にユーザがコンテンツを利用する場合は無料。有料サービスとしてはレシピの人気ランキングなどが表示できるプレミアムサービスがありました。レシピコンテンツそのものの販売は、これまでにない試みとなっています。なお、主なマネタイズの手法としては広告やタイアップイベントなどによる企業からの収益があげられます。


  有料レシピは勝てるのか ⇒ 3つの付加価値提供がキーに
では、これまで無料で利用することが当たり前だった中で、有料でのレシピコンテンツの提供に可能性はあるのでしょうか。このとき、ユーザ全員に対して常に有料でコンテンツ販売をする、ということであれば不可能でしょう。しかしながら、
 ・特定のユーザに対して : ターゲットを絞る
 ・料理家・シェフのブランドを活かし : ブランディングする
 ・レシピを厳選して : パッケージングする
提供することで十分に可能性があります。

まず、ターゲットを絞ることで提供価値が明らかになります。素人の“ナイス”な料理ではなく、“エクセレント”な料理にチャレンジしてみたいユーザに的を絞っていると考えられます。ユーザとしては、プロと同等の料理が作れることをSNSで自慢することができ、自分のアイデンティティを強化することで満足を得ることができるわけです。このとき、ユーザがどういったレシピが必要かを把握することが必要になりますが、今回クックパッドはレシピのリクエストを受け付けるフォームも用意しています。プランニング部分でもユーザの声を広い、かつ労力を低下させる工夫がなされているわけです。

その上で、もともとブランド力のあり有名なプロの料理家・シェフの力を借りています。テレビで活躍しているような料理家やシェフのレシピが手に入るということであれば、新規のユーザ開拓にもつながってきます。また、料理家・シェフにとっても自分のレシピを提供することで商品や店舗をPRすることにつながり、マーケティング効果を期待することができます。いわゆるコラボレーションであり、共創型で価値提供を行うものでもあります。

そして自由に検索して個々の情報を取得するのではなく、あえて20品目のパッケージとしていること。膨大なレシピ情報があっても、欲しい情報が検索できなければユーザは利用することができません。検索ができたとしても、情報量が多くなれば検索作業自体に手間をとります。その手間を楽にさせるために、テーマごとに情報を整理して、パッケージにする=キュレーションすることが有効となるわけです。

つまり、今回のクックパッドの有料レシピでは
 ・エクセレンス
 ・コラボレーション
 ・キュレーション
3つの付加価値を提供することで、コンテンツ自体の価値を高めて販売機会につなげていけるわけです。またデジタルコンテンツですので、提供パターンはいくらでも作ることはできます。ロングテール戦略も容易というわけです。


  更なる付加価値の可能性は? ⇒ ユーザベースのリコメンド
ではこのクックパッドの有料サービスをより付加価値の高いものに変えていく、販売機会を増やしていくためにはどうしたらよいでしょうか。その一つの答えがリコメンドです。しかも、今までのレシピ検索のログからの提案、といったレベルからさらに推し進めたものが必要になります。

例えば、ユーザのSNS上での行動から食生活そのものを提案するようなモデルが考えられます。外食が多い、お酒を飲む機会が多い、健康を気にしているといった方に対しては、栄養士が監修したレシピパッケージをリコメンドするわけです。しかもクックパッドのサイトへの導線、SNSの投稿、メール、他のサイトに表示するバナーなどで提案できれば、ユーザの注目を集めて販売機会に繋げることができるでしょう。FacebookのOpen Graphはかなり活用できる可能性がありそうです。

また、モバイルとの連携でのコンテンツ提供も考えられるでしょう。例えばモバイルの旅行ガイドアプリとの連携。旅先で訪れた場所に応じて地域の特産物や名物料理のレシピパッケージをリコメンドする、実際に旅行中に食べた料理の情報をアプリから登録しておくと関連レシピが掲載されたレシピパッケージがリコメンドされる、といったモデルも考えられます。

このようなユーザの行動をベースとして、ユーザがレシピを購買しようと思うタイミングにリコメンドができればさらに有料コンテンツの提供機会は増やすことができると考えられます。


  まとめ:有料コンテンツの可能性は、ビッグデータ時代の潜在的課題解決
これまでコンテンツは無料が当たり前でした。しかし、情報が膨大に溢れるビッグデータの時代となったことで、また新たに有料コンテンツの提供可能性の芽が出てきています。しかしながら、ただコンテンツに値段をつければいいというわけではありません。クックパッドの例にならうのならば、
 ・エクセレンス
 ・コラボレーション
 ・キュレーション
の付加価値をつけることは必須命題です。これはビッグデータ時代にユーザが持っている潜在的な課題を解決することになるからです。そしてユーザ・エクスペリエンスを追求したリコメンドサービスという付加価値もつなげていくことで、有料コンテンツに商機はさらに広がっていくと考えられます。


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