2012年6月5日火曜日

増えていくコンテンツ再活用型のサービス、課題は“権利” ⇒ 普及には仕組みと権利に対するリテラシーが必要

Facebook上にはたくさんのコンテンツが一般ユーザによって投稿されています。こうしたコンテンツを再利用することで、新たにコンテンツを作れるサービスが登場しています。ただし、この手のサービスはユーザとしては楽しんで使えますが、“権利”という特有の課題が存在しています。

flattrcom




  シェアした画像はどこまで使える? ⇒ 権利は常に付きまとう課題
Mosaic Face MeやFriendly Coverなどのサービスは、Facebook上にアップロードされた画像を利用するサービスとなっています。このとき、自分がアップロードした写真だけならば問題はないのですが、友達がアップした画像や友だちのプロフィール画像を利用している点には課題があるかもしれません。もしかしたらその友だちは特定の友だちのみに公開するつもりで画像をアップしており、それ以上にシェアされることは望んでいないかもしれません。また、著作物であったり、肖像権が絡む画像かもしれません。この問題はFacebookに限った話ではなく、LODのようにインターネット上で情報を共有する場合には常に付きまとう問題です。もちろん、GoogleがスタートしたKnoeldge Graphにも。


  権利の課題をどうあつかうべきか? ⇒ オプトインとオプトアウトの2つのアプローチ
ではどのような解決策が考えられるでしょうか。方策としては大きく
 ・オプトアウト
 ・オプトイン
があげられます。

オプトアウトは簡単に言ってしまえば、公開されている情報は特に断りなく利用していいが問題を指摘された場合は訂正する、というもの。今回紹介した画像作成サービスであれば、友だちから「写真を使わないで欲しい」といわれたら、その友だちの写真を外していく、というアプローチになります。主にアメリカが主張している方式で、サービスを提供する事業者側(またはそのサービスを利用するユーザ)に軸足を置いた考え方です。この場合、サービスをすばやく利用できるというメリットがありますが、著作権や肖像権などの権利保有者は一時的であっても権利侵害されるリスクがあります。

オプトインはその逆。事前に承諾を得た上で情報を利用する、というもの。今回のサービスであれば、事前に友だちに「写真を使わせて欲しい」と依頼して了承をとることが必要になります。主にヨーロッパのほうで主張されている方式で、著作権や肖像権などの権利保有者に軸足を置いた考え方です。権利侵害のリスクは限りなく下がりますが、サービス利用までに時間がかかってしまうのが難点です。


  現実解が必要な権利問題 ⇒ 権利に対するリテラシーが必要
このオプトアウトとオプトインという2つのアプローチ。どちらが妥当な解決策となるのでしょうか。残念ながら、どちらがいいというものではありません。どちらにもメリットがあり、問題点があります。となれば、状況に合わせて使いわける、ということが必要になるでしょう。

ではどうやって使い分けるべきでしょうか。まず、サービス事業者が情報を積極的にユーザから集める場合は、例えばアンケートやユーザ登録などについては個人情報保護法に定められている通りに事前承諾を得るオプトインの形式をとるべきでしょう。また、アプリで収集した情報を二次利用する可能性がある場合についてもオプトイン形式であるひつようがあります。こうした場合はサービス事業者としても、必要性があり、ターゲットを選んでの情報収集となるので、オプトインの手間をかける意味はあります。

これに対して、オプトアウトを採用すべきもとして考えられるのは、ユーザ自身がパブリックに公開している情報です。例えばブログなどに掲載した写真はインターネットというパブリックなスペースに公開している情報であるため、オプトアウトにしておいて問題がある場合は削除などを依頼するようになります。

ただし、現実問題としてここまでシンプルに使い分けることはなかなか難しいでしょう。オプトインについてもどういった形で情報が利用されるのかを十分理解しないで承諾してしまうケースも少なくないでしょうし、逆にそのリスクを恐れて情報がまったく開示されないという可能性もあります。また、オプトアウトについても、ユーザ自身が再利用されてもいい情報を公開するということが前提になりますし、問題があった場合の対応方法も理解しておかなければいけません。より現実的なところを言えば、一度Webに出た情報は一気に拡散し、収集が付かなくなることも少なくないため、事後対応では間に合わない可能性も十分にあります。

これらを踏まえて考えるに、オプトアウト、オプトインの使い分けは仕組みとして必要です。しかしながら、それだけでは十分ではないのです。では何が必要でしょうか。結局のところ、ユーザのリテラシーが必要なのです。特に自分自身が持っている権利についてのリテラシーです。それは頑なに権利を固持するのでもなく、無関心に放置するのでもなく、社会の関係性の中で意味のある形で義務と権利のバランスをとるリテラシーです。これは今後のビッグデータ時代の社会で必須となる、ICTリテラシーの一要素といえるでしょう。