アスキー・メディアワークス
発売日:2011-10-27
スマートシティについて非常にわかりやすく解説されている本。それもそのはず、スマートシティの家元IBMの、しかもスマートシティ推進部長が書いているのだから。スマートシティ=電力の話、と勘違いしている人は絶対に読むべき。そして、将来のビジネスを考えるのであれば決して無視できないので、ビジネスパーソンにもオススメの一冊です。
以下、解釈+要約を整理。
スマートシティとは
今までの社会インフラはアナログで管理していました。ここにITを融合させ、社会全体の最適化を図ることがスマートシティの基本的な考え方。ちなみにここでいう「シティ」とは、コミュニティのことをさしており、必ずしも自治体単位で考えるものではありません。言ってしまえば、スマートシティの取り組みは、ご近所さん同士のコミュニティや、友達同士のコミュニティから始めてもいいわけだし、自治体をまたいで取り組んでもよいということでしょう。
スマートシティの考え方
スマートシティはもともと欧州を中心とした、環境問題への対応が始まり。その後リーマンショックを機にオバマ政権が成長戦略として発表した「グリーンニューディール政策」と、IBMが同時期に提唱した「スマータープラネット」で注目を集めたわけです。そして3.11の東日本大震災が起きたことで、単に環境問題に取り組むだけでなく「社会の最適化を目指すことが必要」という考え方に進化しました。現在では以下の3つの視点が必要となっています。
・スマート : 環境を含めて最適化された社会機能を構築すること
・サスティナビリティ : 持続可能な社会機能であること
・レジリエント : しなやかで強く、回復力のある社会機能であること
また、このスマートシティの前提には経済の安定化が不可欠です。経済的に不安定な状態では、スマートシティを実現するための投資ができず、社会機能を維持することも困難に成るためです。
スマートシティで取り組む分野とは
スマートシティが主に取り組む分野は以下の6つ。
・安心・安全 : 治安維持や生活の安定(食糧、環境含む)であり、諸活動の前提となる
・エネルギー : ガス・電力・水道などのライフラインの最適化(スマート・グリッドはこの分野に当たる)
・交通 : 交通渋滞の解消、公共交通の充実
・ヘルスケア・医療 : 医療格差の解消、医療保険制度の整備
・行政 : 行政サービスの充実、公共の情報の利用価値向上
・教育 : 将来の発展に向けて次世代への投資
これらの取り組み以外にも、スマートシティに連動して個別のサービス提供に結びつくケースも少なくありません。基本的な6つの分野を前提に、社会の最適化のために
・金融サービス(保険・銀行・証券)
・製造業
・流通業
・IT
といった分野も必要になってきます。とくにITについては、諸々の機能を繋ぐ重要な役割を果たすことになってきます。
日本でのスマートシティの取り組み
日本では以下の4都市で次世代エネルギー・社会システムの実験がスタートしています。
・横浜市
・豊田市
・けいはんな学研都市
・北九州市
スマートシティに必要なアプローチとは
スマートシティは、社会の最適化を目指すことを目的としています。そのため、企業や組織の壁を越えて、理念を共有し、協力することが必要となってきます。まさにビッグデータのトレンドをおさえ、オープンなイノベーションを必要としているわけです。
また、こうした理念・協業型のアプローチでは、単純に金銭的な指標(売上・利益)だけではその成果を測れません。金銭的な部分以外の、例えば市民の満足度、生活の銃速度などによる効果測定が必要になります。ブータンの幸福度の考え方は参考になりそうです。