Tetsugakudo Park / kanegen
オープン・イノベーションを進めていくには、その前提としてイノベーションについての理解が必要です。ここでは一橋大学名誉教授 野中郁次郎氏の知識創造およびフロネティック・リーダーと、MIT上級講師 オットーシャーマー氏のU理論を参考にしています。そしていずれにおいても、前提として理念が必要であり、その理念を支えるものが哲学であると考えています。つまり哲学とは、オープン・イノベーションを起こすための最大前提なのです。
理念がなければイノベーションは起こせない
企業理念や経営理念といわれるもの(ここでは「理念」という言葉でまとめています。)は、組織に唯一の方向性を示す普遍的なテーマです。組織に関わる人びと全員が共通して理解することがもとめられます。
この理念があるからこそ、目の前で起こっていることを問題として捉えることができ、その解決策を導き出すことができます。例えば「世界で一番住みやすい町を創りたい!」と考えている人にとっては、街に落ちているゴミは問題であり、それを何とかしたいと思うからこそ新しい清掃制度等の解決策をうてるわけです。
理念の背景には哲学がある
哲学とは
「ものごとの原理原則を追求し、根本的なものごとの在り方を考えること」
と捉えています。
ビジネスにおいては、「仕事とは何か」「会社とは何か」「売上とは何か」「評価とは何か」「顧客とは何か」といった一つ一つの言葉に対して深い思慮を得ることが必要になります。渋沢栄一や松下幸之助、本田宗一郎といった偉大といわれる経営者たちは必ずこうした考え方を持っていました。
そして、この哲学にもとづいて導かれた、「私たちが成すべきことは何か」という問いに対する答えが理念なのです。
哲学がなければ理念に共感が得られない
理念は定義してしまえばひとつのフレーズになりますが、そのフレーズを示すだけでは共感は得られません。決まりきった資料をつけるだけでも不十分です。
共感を得るには丁寧な説明が必要になります。理念で定義した言葉一つ一つに込められた意味、未来への思いを語ることが必要であり、そのためにも哲学は不可欠になるわけです。
テクニックやテクノロジーに求められる“正しい”使い方
今後ビッグデータというトレンドの中で、多くのビジネステクニックやテクノロジーが今後も生まれてきます。しかし、それは一つあやまれば悪用することも可能ですし、私たちの社会全体に予想もしなかった被害をもたらす可能性もあります。例えば金融工学というテクノロジーは証券ビジネスの発展には欠かせなかったわけですが、サブプライムローンを引き起こしたわけです。
つまりこうしたテクニックを正しく使うこと=モラルが求められており、その方向性を示すものが理念であり、使い方を突き詰めて考えるときに必要になるのが哲学なのです。
哲学がオープン・イノベーションを実現する
オープン・イノベーションを行っていくには、組織や企業の壁を越えた協力が必要です。その協力は単に金銭的な契約だけでなく、イノベーションが目指すもの=理念に対する共感が不可欠です。そしてモラルを欠くことも許されません。
理念は哲学をもとに導かれ、共感やモラルの根底にも哲学があります。つまり、哲学がなければオープン・イノベーションは実現することはできないのです。企業はビジネスのテクニック論と同時に、今後はビジネスの哲学をもつことが必要になってくるのです。