2012年1月12日木曜日

【ネタバレBookReview】リーダーシップ 新装版―アメリカ海軍士官候補生読本

アメリカ海軍協会
生産性出版
発売日:2009-04-22
1981年に発刊された、リーダーシップの古典的本。30年も前の内容ではあるが、本質的な部分は現代にも十分通じる。組織マネジメントの基礎知識としておさえておくべき内容といえる。ただし、記述内容がやや難解であるため、一定のリーダーシップの知識を得たほうが理解度は高くなる。

以下、解釈を含めて要点を整理する。

○前提としての定義
本書は一貫して、以下のリーダーシップの定義を前提に“如何にしてリーダーシップを身につけるか”を語っている。
「一人の人間がほかの人間の心からの服従、信頼、尊敬、忠実な協力を得るようなやり方で、人間の思考、計画、行為を指揮でき、、かつそのような特権を持てるようになる技術、科学、ないしは天分」

その上で、必要な要素を3つに


また、このリーダーシップを理解し、身につけるうえで、フォロアーシップを身につけることを必要としている。フォロアーシップとは、チームメンバーとして必要となる要素であり、「リーダーに対して服従、信頼、尊敬、忠実な協力を行うこと」である。


○心理学と行動分析学の活用
リーダーはフォロアー(チームメンバー)とコミュニケーションを行う必要がある。そのため、心理学、行動分析学の要素を理解しておく必要がある。

まず、
・健全な懐疑主義
・客観性
・変化への即応性
の3つを基本的なアプローチとする。

その上で、以下4点を考慮することが必要となる。
・集団における安定した、満足できる社会的関係
・集団内部における身分感情
・集団内の構成員の地位感情
・集団による個人的欲求の満足度合い

なお、集団に関する要素としては大きく以下の4つが紹介されており、それぞれを決定する要素が紹介されている。
・集団の性質 : 規模・構造・密度・集団となった経緯によって決定される
・集団の特徴 : 排他性・一体感・ポテンシャル・目的の統一性・安定性によって決定される
・個人と集団 : 集団との一体感・組織内の位置づけ・参加の度合い・リーダーへの依存度により、関係性が決定される
・集団の構成員の欲求 : 集団との関係性の安全、集団内での地位、集団による地位、評価、報酬、組織の士気により変化する



○リーダーに必要な資質
実践レベルにおいてリーダーに求められる資質を以下の通り上げている。
・組織に対する忠誠
・行動・判断する勇気
・善悪の判断基準(倫理観)
・ユーモア
・真摯さ、謙虚さ



○リーダーに求められること
実際にリーダーが組織内において求められる要素を次の通り挙げている。
・目標設定と計画
・専門知識と熱意・強い意志を示す
・迅速さ・率先する力
・周囲に対する配慮と信頼と協力の獲得
・規律を守り、一貫した公正な態度
・決断



○よきリーダーとなるためのポイン
上記の要素を踏まえたうえで、リーダーとして成功するための追加要素として以下をあげている。
・部下を知り、コミュニケーションする
・寛容である
・自分の言葉で表現する力をもつ
・節制する
・文書と口頭をバランスよく使う



○リーダーが抱えるリスク
リーダーとして組織内の問題には必ず直面する。その問題点=リスクとしては主に以下のようなものがあり、これらを解決しなければ組織としてのパフォーマンスは発揮することが困難と成る。
・リーダーに対する信頼の欠如
・チームメンバーの葛藤
・成果に対する非協力者の存在
・リーダー・チームメンバーの急な異動
・正当な評価の欠如

これらに対して、組織内での承認・適正な評価基準の設定・非協力者の処罰・組織内競争の促進・適正な評価をおこなうことで問題解決を図るべきとしている。



○組織を成果に向かわせるために
組織によって成果を創出するために、リーダーは組織内において以下を対応しなければいけない。
・成果に必要なミッションを組織内に全て割り当てる
・チームメンバーが自分の責任・ミッションを明確に理解できるようにする(簡潔に整理し、何をすべきかを明確にする)
・チームメンバーの特性・職位にあったミッションを与え、必要な権限を最大限委譲する(責任に相応)
・矛盾や重複した責任・ミッションの分担は行わない
・組織全体の構造に一貫性と正当性を持たせる
・複数のリーダーを一つのチーム、または一人の個人に置かない(上長1に対し、チームメンバーNとする)
・リーダーがコントロールできないチームメンバーをおかない
・指揮系統の安定を図る(他による侵食を防ぐ)
・上位にいるリーダー(複数のチームリーダーをまとめるリーダー、会社で言う部長など)は、方針によって組織を統制する
・組織内で相互に監視が行われ、統制機能が働く関係性を作る




古典的な内容ではあるが、現代の組織においてもその概念は十分に適用することができる。野中郁次郎氏が昨今唱えている、賢慮型リーダーシップに通じる要素も、共通善や対話の重要性を説くあたりを中心に多分に存在している。

ただし、社会環境は30年前と大きく変わり、本書はアメリカ海軍の士官にむけて作られているため、ケーススタディはあくまでも参考情報、といったところ。心理学・行動分析学については、リーダーとして学んでおくべき要素が多いため、改めて別の書籍で内容を深堀りすると知見が広がりそうだった。