2012年1月29日日曜日

具体的に提供されているアナリティクス・サービス 企業の大小ではなく“視点”が差をつける

今後成長が期待されるアナリティクス・サービス。関連するテキストマイニングやビジネス・アナリティクス・ソフトウェアについては、すでにサービスが多数存在します。しかし、今後のアナリティクス・サービスは、Googleの「Search plus Your World」や、IBMの分析サービスのように、ユーザ個々のニーズにあった情報提供をすることが必要となってきます。そこで、2012年になって発表された、日本国内の新しいアナリティクス関連サービスを整理してみたいと思います。やや批判的に。

New Year's escalator workers / motoshi ohmori



  日立録画テレビ「Wooo」の番組オススメ機能
日本国内でのテレビ生産を終了することになった日立ですが、提供しているテレビにはアナリティクスが搭載されています。録画テレビ「Wooo」には、過去に録画したテレビ番組の情報からオススメの番組をリコメンドしてくれる機能がついています。これもある種のアナリティクスといっていいでしょう。

ただし、これはあまりユーザにとっては魅力的なものとはいえません。その理由としては
 ・過去録画した番組だけを頼りにリコメンドをするのみ = 録画していないとリコメンドはない
 ・スマートTVのトレンドを考えると、インターネット上の情報も分析対象にすべき
 ・オンデマンドのトレンドを考えると、電波放送だけをリコメンドするのでは不十分
 ・オンデマンドやスマートTVが普及すれば、“録画する”ということ自体古い概念になる
といったところがあげられます。アナリティクスに限らず、日本のテレビ産業はトレンドをつかめていない感が強いのですよね。


  DNP子会社もアナリティクス・サービスを提供
DNPの子会社であるDNPデジタルコムは、1月13日よりブログやTwittreから口コミ情報を集めて分析する「ソーシャルリスニングサービス」を提供しています。これもやはりアナリティクスの一つの形。特定のキーワードに対して口コミ情報をインターネット上から集め、課題抽出などを行うとのこと。ソーシャルメディアに対してテキストマイニングができる仕組み、といったところでしょうか。

この種のサービスは、ソーシャル・メディアに対して明確に分析したいテーマ(キーワード)がある場合に利用価値は高いといえます。例えば、知名度が十分あり、略称や正式名称なども定着化した商品の分析などには役立ちます。ニーズや用途が明確な分、類似するサービスも多く、競争が激しくなっているカテゴリでもあります。

しかし、ビッグデータという背景を考えると、実は一番難しいのがこのキーワードの設定なのです。SNSを通じて個々人が発信する情報では、必ずしも正式名称や一般化した略称を使ってくれるとは限りません。隠語をつかったり、漢字を複数の文字の組み合わせで表現したり(「化」を「イヒ」にするなど)することも少なくありません。これらの情報を無視できればいいのですが、ユーザ個々のニーズにあった情報を提供する、ということを考えるとそうもいきません。

今後は特定キーワードを軸に、関連する可能性のある言葉も含めた俯瞰的な情報を自動的に収集・整理・分析できるようになれば、非常に利便性の高いサービスとなっていくのではないでしょうか。


  パーソナライズファッションマガジン「pape.mu girls」
パペルック株式会社が提供するのは、パーソナライズ化された女性向けのファッション情報を提供するアプリ。ユーザの趣向を分析し、趣向に合った情報をインターネットから集めて提供してくれます。情報の元となるのは、モデル400人や100ブランドのブログ・webサイト。今後は女性ファッションだけでなく、男性向けも提供していくのことです。
このサービスは、消費者向けにアナリティクスサービスを具体化している好例といっていいでしょう。同様の仕組みを使えば、例えば飲食店を探したり、レジャースポットを探すときにも使えます。サービス提供の幅が増していくことに期待ですね。

アナリティクスの対象となるWebサイトが制限されなくなれば、さらに広範囲にわたって個別のユーザニーズに対応していけるのではないでしょうか。おそらく現在は、アナリティクス対象のブログやWebサイトを人的に管理しているのだと思います。もしそうだとすれば、例えば新進気鋭のデザイナーがブログを立ち上げたとしてもすぐには反映されませんし、一般消費者の意見も反映されにくくなります(現在はモデルやブランドなど、売り手側の情報だけ)。また、海外からの情報も限定的でしょう。ファッションに関する情報をWeb全体から自動的に集め、個々のニーズに合わせたファッション雑誌として提供することができれば、ユーザの強い共感を得られる業界全体に大きなインパクトをもたらすサービスとなり得るのです。



   まとめ:ビッグデータのトレンドを踏まえ、より俯瞰的なサービスをユーザ視点で構築することが必要
バズワード化してきてはいますが、ビッグデータのトレンドは確実に存在します。このビッグデータのトレンドを踏まえると、アナリティクス・サービスには
 ・社会全体の情報の活用(特定の情報に偏ってはいけない)
 ・俯瞰的な視点での最適化(一つの視点にとらわれてはいけない)
 ・ユーザ視点での共感あるサービス提供(一方的に提供しない)
といった要素が必須となってきます。今後、こうした要素をもった、私たちを驚かせてくれるようなサービスが登場してくることでしょう。アナリティクス・サービスは始まったばかりですので。

また、このとき“言われたらやる”という姿勢は捨てることが必要です。どのようなデータを、どのような形で分析・提供すべきかは刻一刻と変わっていきます。受身の姿勢でいては、新しいサービスの提供はいっそう困難になっていくでしょう。

以前、テキストマイニングを提供している会社のコンサルタントの方と、ビッグデータのトレンドについて議論させていただきました。その際に、「ビッグデータのトレンドに対してどういうアプローチを考えていますか?」と質問したところ、「データを指定してくれればやるので、今と変わりません」という回答をもらいました。どういったデータをどのように分析することがビジネスに必要になるのか、というビジョンが感じられず残念な思いをしました。テキストマイニングを提供しており、コンサルタントという肩書きを持つのであれば、何らかの示唆をいただきたいものです。


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