2012年1月31日火曜日

Apple決算発表、iPhone4Sで圧勝 2012年はデバイスと電子書籍で成長するけど、2014年に正念場は迫っている

Appleが2011年10月-12月期の決算発表をしたので、改めてみてみました。収益状況のサマリーも再整理してみると、Appleの圧倒的な勢いがよくわかります。ユーザ・デバイスの分野をこの先もリードしていくんでしょう。それを示すかのように、アメリカのスマートフォン・マーケットにおけるiPhoneのシェアもAndroidをわずかながら越えています。

R.I.P. - Steve Jobs / YAXZONE


  収益サマリー
2011年10月-12月期の伸び方はかなり驚きの数字。利益については2.2倍近い130億ドルにもなっています。売上高も前年比73%増の463億円。IT業界で名をはせている他社と比べても完全に頭一つ抜け出している状態。スティーブ・ジョブスは亡くなりましたが、Appleの強さは変わっていないようです。



特に目を見張るのが日本市場での伸び。iPhone4Sの発売もあり、売上高は148%増の35億ドル。日本でのiPhone人気、Apple人気を物語っています。



  シェアでAndroidを逆転
Kantar Worldpanel ComTechのリサーチ結果によると、アメリカ・スマートフォン市場の2011年10月-12月期のシェアは
 ・iPhone 44.9%
 ・Andoroid 44.8%
となっており、わずかながらですがiPhoneがAndroidを上回りました。iPhone4Sはアメリカでも人気ですね。

そしてこの数字は数字以上の意味があります。なぜならiPhoneは1メーカー(Apple)のみ。これに対してAndroidはたくさんのメーカーによる販売。機種別のシェアでいってしまえば、iPhoneの圧勝といえるでしょう

これはスマートフォン関連のアプリ提供を考える企業や個人にとっては重要な事実です。それは
 「アプリ開発をするなら、まずiPhoneを念頭におく」
ことが必要であることを如実に表しているからです。Androidは機種依存の問題もあるので(例えばGalaxyは個別に開発環境を作って対応している企業もあります)、単一機種で半数近いシェアをもつiPhone向けに開発を行うほうが、ユーザ利便性を叶えるものになりやすいのです。

こうした状況に持ち込んでいるAppleは、まさにプラットフォームの勝者といったところ。この牙城に
 ・Androidを提供するGoogleはNokiaを買収することで切り込んでいけるのか
 ・Microsoftはこれまで築いてきたブランド力で(とくにエンタープライズ領域で)WindowsPhoneを展開できるのか
といったところが今後注目のポイントです。



  2012年は電子書籍&教育へも展開
すでに発表があったとおり、Appleは2012年に電子書籍市場、そして教育市場に強力に展開してきます。ここ最近あったニュースを並べるだけでも、その力の入れ方は見て取れます。

・iBooks2のリリース
もともと提供していたiBooksをバージョンアップし、写真や動画などを入れ込むことができるようになりました。いままでの電子書籍は単に本のテキストを電子化するだけだったので、電子書籍におけるユーザ・エクスペリエンスを格段に向上させるものになるでしょう。メールで考えれば、文字だけだったメールでデコメが使えるようになった感じです(実際はそれ以上ですが)。

・iBooks Authorのリリース
iBooks向けの電子書籍を編修できるフリーのツール。だれでも簡単に電子書籍を利用でき、iBookstoreを通じて販売することができます。ただし、iBookstoreを通じて販売した電子書籍は他の販売経路では提供できません。iPhone/iPad向けと同時にAndoroid向けも、という方はちょっと扱いを考えたほうがいいかも知れませんね。

・iTune Uのアップデート
iTune Uは学生向けのサービスであり、今までは大学の講義を配信していました。しかし、このアップデートで小学校から高校までの講義や課題などが配信可能になります。すでに50万以上のコンテンツが提供されています。


電子書籍市場ではAmazonのKindleとの戦いが待っています。アメリカのマーケットを中心に今後激戦が繰り広げられるでしょう。しかしながら、iBooks Authorが大きな差別化を生むことになるでしょう。なぜなら、iPhoneアプリのように個人でも電子書籍の出版を容易にするからです。私のように「無名ではあるものの、何らかの形で文書にまとめたい」という方にとってはとても利用しがいのあるツールです。個人が発行する電子書籍を流通させることで、iBooksは発展していく可能性があるのです。

また、デバイスの価格が高いので教育分野は困難、という指摘があります。しかしこれも解決可能な問題でしょう。「将来のユーザである子どもたちを囲い込み、5年後10年後のビジネスで顧客になってもらう」という前提に立てば、投資として端末価格を引き下げることはリーズナブルかもしれません。加えて、電子教科書による学習効果が通常の教科書より20%も学習効果が高い(Houghton Mifflin Harcourt発表)ことも検証されているため、政府や民間から端末導入に向けた支援を取り付けることも考えられます。ソーシャル・ファンドを使うことも考えられますね。



  iPhone5、iPad3、そしてiTVと注目デバイスのリリースも
2012年はアップルの注目デバイスも登場してきます。いまのところのウワサとしては
 iPhone5 ・・・ 夏(8月ごろ)から秋(10月ごろ)
 iPad3 ・・・ 3月ごろ
 iTV ・・・ 4月~5月ごろ
に発売されるとのこと。四半期ごとに注目を集めるデバイスを投入していくようです。電子書籍と教育分野の展開も踏まえると、2012年はまだまだAppleは業績を伸ばしそうです。



  Appleはどこまで業績を伸ばすのか
Appleの正念場は2014年に訪れるのではないでしょうか。おそらく2013年まではスティーブ・ジョブスの残したアイディアや企画、そして2012年までの勢いで成長できるはず。しかし2014年にはスティーブ・ジョブスがいなくなった後、ティム・クックを中心とする陣営の真価が問われることになります。

2012年時点での基礎研究、そして2013年の投資次第では2014年以降も安定成長していくことになりますが、そうでなければ業績に変動が起きるかもしれません。過去にスティーブ・ジョブスが一度Appleを去ったときは、厳しい状況に陥ってしまいました。歴史は繰り返すのか、その反省によって新しい未来が創られるのか、その分かれ道が目の前までに迫っているように思います。


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