2012年1月30日月曜日

【LODチャレンジ】「Linked Open Game」 LODが実現するビッグデータ時代のゲームとは


LODチャレンジのアイディア部門にエントリーする内容を掲載したいと思います(にぎやかしのエントリーですが)。テーマはLOD×ゲーム= 「Linked Open Game」です。

Super Mario RPG / xshamethestrongx

  「Linked Open Game」の概要
ゲームにLODの要素を加えたらどうなるでしょうか。ゲームのシナリオ、キャラクター、イベント、アイテムといった要素をLOD化し、自由に追加できるとしたら、ソーシャルの力も使ってまさにビッグデータ時代の”はてしない物語” が実現できるのではないでしょうか

さらにスマートデバイスはもちろん、AR(拡張現実)やIOT(モノのインターネット)などを活用すれば、現実世界(リアルサービス)との融合も可能になります。そしてソーシャルによる監視機能とOPEN ID管理による認証の仕組が働けば、偏った課金システムを排除し、健全なゲームとして成立するでしょう。それが 「Linked Open Game」です。


  「Linked Open Game」の基本コンセプトと背景
基本コンセプトは
 「ゲーム自体が成長し、発展する、健全さが保たれたゲーム」
であり、提供者側の負担を軽減しながら、同時にユーザのエンターテイメント性を高めることにあります。

従来のゲームは開発チームを組み、シナリオを作ってリリースしたら、あとはプレイするだけでした。ソーシャルゲームが登場したことで、次々と新たなコンテンツ(イベントやアイテムなど)を投入することで、継続的な発展性が必要でした。しかしこれも提供者サイドが常に企画や制作に対応する必要があったわけです。

また、いくらコンテンツを追加して行くとはいえ、同一のタイトル内ではゲームシステムの変更はできないため、例えば敵キャラが強くなったり、デザインが変わる程度の変化をつけることがほとんどでした。当然、ユーザー側としては飽きてきます。飽きればゲームから離れてしまいます。となると、提供者側は新しいユーザーを得るためにTVCMなどのプロモーションをうったり、新しいタイトルのゲームを作ることが必要となります。

当然、このような状況では提供者サイドには負荷がかかります。そして運営コストをまかなうためには相応の収益が必要となるわけですから、あの手この手で課金しようとするのです(単純に提供者側が儲けたい、という意思がある場合も少なくありませんが)。ときにそれは健全性を失い、例えば子どもが知らないうちに有料コンテンツを利用してしまい、高額の請求が後になってくる、などという事件も起きているわけです。

つまり、現在のゲームには
 ・提供者の負担軽減
 ・ユーザのエンタテーメント性向上
 ・ゲームとしての健全性の担保
が必要となっているわけです。そして今回の「Linked Open Game」はこの3要素を実現するものであり、ビッグデータ時代の新しいゲームをカタチにするものなのです。



  「Linked Open Game」のゲームの遊び方
ユーザーはゲームをスタートすると、始めは用意されたシナリオにしたがって進みます。この段階で、「Linked Open Game」のチュートリアルを用意しておき、ユーザーがゲームを楽しむための要素を説明しておきます。なお、ユーザーはゲームを始めるためには、本人の年齢確認ができているIDが必要になります。これはゲーム内での課金部分の問題を回避するためです。現実的にはFacebookなどのOpenIDを使ったり、親が子どものために作って認証をとったIDを使うことになるでしょう。

ゲームを進めていくと、ゲーム中のあちらこちらに自由に触れ、コメントでき、そこからゲームイベントで遊ぶことができるようになっています。例えば、ゲーム中に出てくる何気ない茂みに触れると、葉っぱを使ったパズルゲームが始まり、クリアするとポイントがもらえます。街中の人と話せば、「○○を探して欲しい」という依頼を受けて冒険に出ることもできます。何かを壊すと持ち主が怒って、鬼ごっこのゲームが始まります。このようにあちらこちらに遊ぶ要素が散りばめられており、一貫したゲームの世界観の中に用意された多様なコンテンツから、気が向いたもので遊ぶことができるのです。

そしてところどころ、現時世界と連動するものを用意します。例えばゲーム中でバックを買えば後日ホンモノのバックがうちに届いたり、実際に訪れたイベントでポイントがもらえたりと、リアルと連動したサービスを提供するのです。

おそらくユーザーは今までのオンラインゲームとあまり変わらない感覚で利用することになるでしょう。したがって、「Linked Open Game」という新しい概念であっても、ユーザーにとっては利用開始のハードルが非常に低い状態となります。なぜなら、すでに知っているものに似ているからです。しかし、今までと違うことは、この世界が「Linked Open Game」の世界だということです。


  「Linked Open Game」の提供方法
「Linked Open Game」の特徴はその提供方法です。提供者の負荷をさげながら、ユーザーのエンターテイメント性をあげて、健全性も担保できるようにするのです。これによりユーザーは従来のオンラインゲームと同じ感覚で、より上質なユーザー・エクスペリエンスを得ることになります。以下、提供の流れです。

①核となる部分の制作
まず、ゲームの核となるシナリオとコンテンツを用意します。この部分を中心に、ゲームは成長し、発展していくことになります。おそらくは、このゲームの中核部分のセンスが全てを決めることになるでしょう。なぜなら、魅力的でないシナリオには協力者は集まらず、当然ユーザも集まらなくなるからです。

②ゲームとリンクできるタグを設定(=Linked Open Data)
ゲーム中のいたるところに、他のコンテンツがリンクできるタグを設定します。何気ないゲームの背景の中、キャラクターの体の一部など、ユーザーが触れそうなところにタグを設定するのです。そしてこのタグをオープン、つまり誰でも利用できる状態で公開します。これにより、自前で全てを開発する必要がなくなるため、提供者側の負担を軽減することができます。

③タグをつかってゲームコンテンツをリンク
公開されたタグをつかい、ゲームにアドオンするコンテンツを提供してもらいます。具体的にはゲームのアイテムであったり、イベントであったり、ミニゲームであったり、新たしいシナリオであったり。やり方によっては異なるゲームを繋ぎ合わせてしまうことも可能になります。幅広く集合知を集めることになるので、エンターテイメント性は向上していきます。

④ゲーム以外のコンテンツもリンク
ゲーム以外にもECサイトやクーポン、SNSなど他のサイトの情報ともリンクさせていきます。ARなどのコンテンツと組み合わせてもいいでしょう。サービスレベルでも繋ぎ合わせて、ゲームの世界と現実の世界をミックスしていきます。現在のトレンドを考えれば、Open Graphなどを用いてSNSとリンクすることは必須になるでしょう。

⑤リンクしたゲームコンテンツを公開
リンクしたゲームコンテンツをユーザに公開します。同時に公開のポリシーも設定します。例えば13歳以上、15歳以上、18歳以上といった年齢制限を設けます。これは、課金型のコンテンツなどを不用意に子どもに使わせないようにして、健全性を担保するためです。

このようにしてユーザーは新しいゲームコンテンツを利用できるようになります。そして②~⑤を繰り返すことで、「Linked Open Game」は「ゲーム自体が成長し、発展する、健全さが保たれたゲーム」となるわけです。プレイずる度に新しい発見をユーザーは得ることになり、今までにないユーザーエクスペリエンスを獲得することになるのです。

実際に提供するに当たってはコンテンツを制作するための環境や、IDごとに課金情報を管理する仕組み、全体のトラフィックを管理手法、ユーザへのコンテンツ訴求ツールなどを包括した「Linked Open Game」のプラットフォームが必要になります。このプラットフォームの構築をいかに対応するかが課題になるでしょう。


  「Linked Open Game」の可能性
「Linked Open Game」を実現することで提供者サイドの負荷が下がります。これはゲームコンテンツ提供のハードルが大幅に下がることを意味します。そうなってくると
 ・ゲーミフィケーション
 ・シリアスゲーム
といった概念を実現することが容易になってくるでしょう。

ゲーミフィケーションは、簡単に言ってしまえば「社会活動の楽しむ化」です。ごく普通の社会活動にゲームの要素を取り入れて、エンターテイメント性を持たせるというもの。例えば会社でのランチ。単に周辺の店舗へランチを食べに行くのではなく、指定された店舗に行くごとにポイントがたまり、制覇するとプレゼントがもらえるような仕組みです。これは人の行動を誘導したり、商品やサービスを訴求する仕組みとして注目されています。

シリアスゲームもゲーミフィケーションと似た概念ですが、こちらは現実世界の問題をゲームにして理解して貰う、という考え方です。例えば災害時の対応方法や感染症の処置方法、発展途上国の貧困層の生活実態や戦争時の生活などを疑似体験しながら、学びを得るというものです。難しい問題を多くの人に知って貰うための手法として注目されています。

これらゲーミフィケーションの要素やシリアスゲームの要素を「Linked Open Game」に取り込めば、社会的な貢献にもつながってきます。ユーザーは単にゲームを楽しんでいるだけのつもりでも、それは地域経済に貢献するものになるかもしれませんし、社会的な教育を行っているのかもしれない、そんな状態を作れるのです。


  「Linked Open Game」のマネタイズ
ビジネスとして「Linked Open Game」を展開することを考えると、やはり気になるのはマネタイズ。要はお金の儲け方です。単純に考えれば
 ・広告収入
 ・ゲーム内課金
 ・プラットフォーム利用料
といったところで収益獲得は可能です。

まず広告収入については、「Linked Open Game」の公開タグの一部を広告につなげておくことで可能でしょう。このとき、ユーザーIDの情報に基づいて、ユーザーの嗜好にあった広告を表示することも可能です。2012年のトレンドとして注目されているアナリティクスの応用です。

ゲーム内課金についてはコンテンツを提供している分、容易にできます。ただ、単にアイテムを買うなどのありきたりな課金方法ではユーザーが離れてしまいます。例えば企業とのタイアップをとり、ECサイト自体をゲーム化して、ゲーム内での商品購入=現実世界での商品購入になる、といった工夫も必要になります。

プラットフォーム利用料の徴収も可能でしょうが、ここについてはかなりやり方を考える必要があります。オープンな環境でサービスを提供するため、AppStoreのように販売金額のうち30%をとる、といったモデルが作りにくくなります。流通を管理し切れない可能性があるためです。可能性としては、
 ・プラットフォームを利用したいと考える人たちに対して、サービスメニューを用意して契約を結ぶ
 ・正規のプラットフォーム流通に圧倒的なメリットを用意して、販売金額に対する料率でプラットフォーム利用料を徴収する
 ・ユーザーIDをもとに利用したサービスを分析し、サービスの利用状況に応じて、プラットフォーム利用料を徴収する
といったものが考えられるでしょうか。


  最後に
「Linked Open Game」は昨今のゲーム市場が抱えている、提供者の負担、エンターテイメント性、健全性といった問題を解決するだけにとどまりません。社会が抱えている問題に対し、ゲームというアプローチから解決策を導く可能性があります。また、Linked Open Dataという概念、さらにはその先にあるセマンティックWebの世界を広く一般に普及させることができるのです。