2012年1月11日水曜日

【ネタバレBookReview】 イノベーションの作法

野中 郁次郎,勝見明
日本経済新聞出版社
発売日:2009-12-02
野中郁次郎氏の著書「美徳の経営」で指名される「賢慮型リーダーシップ」の具体的事例を集めたような本。したがって、本書は「美徳の経営」と併せて読むほうが理解度が高まる。

「美徳の経営」の「賢慮型リーダーシップ」の要点は以下の6つ。
・善悪の判断基準を持つ(共通善)
・場づくりの能力を持つ
・本質を直感的に掴む
・対話を通じて巧みに表現する
・清濁合わせのみ、あらゆる手段を使って実現する
・新たなる賢慮を育成する

これらについて日本企業に置ける具体的な事例と要点が本書では整理されている。以下、解釈を含めて項目別にまとめる。

《善悪の判断基準を持つ(共通善)》
○理想主義的な探求
- 誰にとっても"よいこと”とは何か、明確にする
- ”よいこと”を明確にすることで、直感力が身に付く
- ”よいこと”を理想として追求することで、清濁あわせ飲むことができる
- 本質を掴むことで、理想へのシナリオがが蹴る

○知的体育会計の追求
- 不確実性が高い状況では、理想に向かう実践力が重要
- 実践から入り、知識を得るのが知的体育会計
- くるもの拒まずで文脈を太くしていく

《場づくりの能力を持つ》
○場をつくる
- 暗黙知が共鳴する場が必要
- これからはモノではなく、コトを作る場が必要
○どうやって場をつくるか
- 一体感によって場づくりを進める
- 小さなコミュニティをつないでいく

《本質を直感的に掴む》
○知のリンク
- マクロとミクロをつないだ仮説生成力が求められる
- 周囲を惹き付ける吸引力が水平展開を可能にする
- 全体と個のバランスをとることが求められる
- 二頂対立を越えた共通項を見いだす
○知のアライアンス
- 本質をつかみ、知を水平に広げる
- 知識が間接的に戦略上の力となる

《対話を通じて巧みに表現する》
○感情知を力とする
- 主観的な知識創造の仕組みが必要
- 悲しみの共有が本質的な感情の共有
- 感情の共有は巧みな言葉をもたらす

《清濁合わせのみ、あらゆる手段を使って実現する》
○勝負師のカン
- 分析からはイノベーションは生まれない
- 主観と客観の双方のバランスをもって未来をみる
○コンセプトの重視
- 共感を生み出すコンセプト設定が必要
- 一皮むけることがイノベーターを生み出す
- ミドルアップダウンが組織の要

《新たなる賢慮を育成する》
○オープンに
- オープン性が個別の善を共通善とする
- オープンであるために、自らの生き方を確立する
- 自らの生き方を確立することがイノベーションを引き起こす
(まねをしているだけではイノベーションにはならない)
- 守破離の精神を醸成する


あとがきにあるQUESTの意味、というものも哲学的で面白い。
・Q:questing : 探求の心を持ち
・U : understanding ; 本質を理解し
・E : evaluating ; 価値を図り
・S:supporting : 他者を支え続け
・T : trusting : 事故と他者を信頼する
これはイエズス会司祭のブルカ師の言葉だそうだ。イノベーターは「QUEST」を続けるべきだと改めて思い知らされる。