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なお、現在主に行われている通信量抑制の対策は、
・短期的 : データ通信量制限
・中期的 : 料金体系修正
・長期的 : 端末からのデータ通信最適化
の3つが大きくはあります。それぞれ整理していくと、なかなか情報量が多いため、3回に分けて掲載しています。
端末からのデータ通信最適化 ⇒ 必要であることは間違いなさそう
ニールセンが発表したOS別の月次データ通信量(2011年10月-12月期)によると
・Android : 582MB
・iOS : 492MB
・Windows Phone 7 : 317MB
となっており、スマートフォンとして広く普及しているAndoroid、iOSが高い水準となっています。また、これまでのデータ通信量の推移をみると増加傾向にあることもわかります。
今後、さらにスマートフォンが普及することを考えれば、システム的に制御できる部分については、最適化をはかり、有効に通信環境を利用できるようにすることは必要でしょう。
NTTドコモの通信障害での場合は? ⇒ 関係各社と協調して端末・アプリの改善を求める
NTTドコモも1月25日の通信障害への対応策として触れており、
「世界中のキャリアと協調し、アプリケーションが送信する制御信号の抑制などの対策に取り組む」
としています。さすがに最適化とまではいきませんが、端末・アプリに関する改善策が必要であることは明言しています。
具体的には、
・Android OSの通信回数の制限(現状は28分に1回の頻度で通信)
・コミュニケーションアプリの通信回数の制限(現状は起動していなくても3~5分に1回程度通信)
をGoogle、およびアプリ開発者に求めていくとのことでした。
端末のデータ通信最適化は実現できるのか? ⇒ スマートフォン市場が成熟する2015年ごろならば可能かもしれない
しかし、こうしたデータ通信に関わる端末・アプリの改善策にはかなりの時間を要します。最適化となればさらに労力が必要となるでしょう。その理由は大きく
・改善の目標=“最適”の定義
・環境の更なる変化
・強制力
の3つがあげられます。
まず、そもそもどこまで改善すべきなのか、どういった状態が理想なのか、すなわち何を持って“最適”とするのか、定義することが困難です。通信環境を維持するというキャリア側の視点からすれば、Andoroidの通信回数がゼロに近づくほど最適といえるでしょう。しかしユーザからしてみれば、もしかしたらAndoridの通信頻度はサービスを利用するために必須の条件かもしれません。そうであれば、Androidの通信回数を制限することは最適とはいえません。携帯キャリア、サービス提供者、ユーザといった複数の関係者にとってメリットのある形を探ることが必要となります。そしてそれを探ることは当然ながら一筋縄には行かないのです。
また、初代のiPhoneが登場し、現在のスマートフォンの形を定義づけたのが2007年。それから5年たった今、ようやくスマートフォンが広く普及しはじめています。黎明期から成長期へと移り変わってきたといっていいでしょう。そして今後もスマートフォンは進化していきます。IOT(モノのインターネット)にも波及していくことになるでしょう。そうなれば、通信をめぐる環境は今後さらに大きく変化します。現状は最適化よりも、こうした環境の変化に対応することが優先される時期でしょう。
仮に“最適”が定義でき、環境の変化も超えて最適化へのアクションが可能になったとしても最後の問題があります。それは最適化に向かわせる強制力です。結局のところ、オープンな環境で、数多くのメーカーやアプリ開発者がサービスを提供している現状、強制力を働かせて全体を最適化に向かわせるには大変な労力が必要です。だからこそNTTドコモも“世界中のキャリアと協調し”としているわけです。しかし、その協調自体も利害が異なる企業同士、話を進めるには時間が必要になります。
こうした問題点を踏まえると、端末からのデータ通信を最適化が可能になるのは、スマートフォン市場が成熟化してきた段階。日本国内であれば普及率が50%を越えるといわれている2015年末(総務省移動通信化発表の情報より)ぐらいになりそうです。
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