2012年2月15日水曜日

増加するデータ通信量へのインフラ対策、その有効性は? ⇒ 当面はデータオフロード(公衆WiFi)でしのぐしかなさそう

増大するデータ通信量に対する携帯キャリアの対策。それは度の程度有効なものなのでしょうか。2012年1月25日の通信障害に際して発表された、NTTドコモの対策も踏まえながら、まずはインフラ強化策の有効性から整理してみたいと思います。

SAKURAKO Cafe - You can use FREE Wi-Fi. / MJ/TR (´・ω・)

なお、現在主に行われているインフラ対策として、
 ・短期的 : データオフロード(公衆WiFi整備)
 ・中期的 : 現行通信環境の強化
 ・長期的 : 次世代通信環境の整備(第4世代携帯サービス)
の3つが大きくはあります。


  データオフロード ⇒ 都市圏を中心に有効だが、現在はあくまでも補完的な仕組み
データオフロードについては、都市圏を中心に効果を発揮します。その理由としては
 ・都市圏が最もデータ通信が集中する(単純にスマートフォンを持っているユーザの絶対数が多い)
 ・人口が集中しているため、小まめにWiFiスポットをおけば通信量が分散しやすい
 ・WiFiスポットを設置しやすい屋内での利用が多い(駅、ビル、店舗内)
といったあたりがあげられます。設置作業も容易なことから短期的に効果も発揮します。

しかしながら、
 ・地方ではあまり効果がない
 ・ユーザに公衆WiFi利用の啓蒙が必要
といった側面があることも無視できません。現在のところデータオフロードは網羅的に通信環境を改善する仕組みではなく、携帯電話の通信環境を補完するための仕組み、といった位置づけなのです。

ただし、総務省が掲げている「光の道」構想が形となり、あらゆる場所でWiFiが使えるような環境であれば話は変わってくるでしょう。主となる接続方法がWiFiであり、WiFiに接続できないときだけ携帯回線を使う、という利用形態に変化するからです。しかしながら、大規模なインフラ投資が必要となるため、実現にはかなりの時間を要します。


  通信環境強化 ⇒ 携帯キャリアの中心的な取り組みだが、効果が出るのは2012年後半以降
通信環境の強化は携帯キャリアの中心的な取り組みです。1月25日に発生したNTTドコモの通信障害への対応策では
 ・全国のパケット交換機の処理能力一斉点検(2012年2月中旬より実施)
 ・制御信号の増加に応じた設備増設(2012年2月中旬より“すみやかに”実施)
 ・パケット交換機の更なる処理能力向上(2012年8月中旬より実施)
の3つに大きく触れていました。とくに設備増設については“すみやかに”とあるように、すでに1640億円をかけて対応することが発表されています。
 
しかし、現実的に考えると
 ・設備には設置に必要な工事などの時間がかかる
 ・工事中もスマートフォンの普及は続く
という2点から、効果が出るまでには時間がかかります。少なくとも効果が出てくるのは2012年後半からであり、対応完了には長ければ2014年前半ぐらいまでかかってしまうかもしれません。


  次世代通信環境整備 ⇒ 期待値は高いが、現在の問題解決策にはならない
次世代通信環境=第4世代携帯サービスについては2012年が本格的なスタートの年となります(厳密にはNTTドコモのLTE「Xi」などは第3.9世代)。しかし、第3世代携帯はNTTドコモが「FOMA」を2001年にサービス開始してから、本格的に普及するまでには3年程度かかっています。しかも現在、携帯電話の買い替えサイクルは2005年時点で約2年だったものが、2011年現在では約3年となっています。これらを踏まえると、第4世代携帯サービスの普及によってデータ通信量の問題が解決されるのは2015年ごろとなり、直近の問題解決策にはならないでしょう。
出典)CIAJ 2011年度 携帯電話の利用実態調査


  まとめ:現状最も有効なのはデータオフロード、ただしこれは暫定的処置
現在起きているデータ通信量の問題を解決するにはデータオフロード、つまり公衆WiFiの整備が最も効果的といえるでしょう。アクセスが集中しやすい都市圏の公衆WiFiを整備し、WiFiの利用促進を行っていくことで、当面はデータ通信量の問題を“しのぐ”ことはできます。(ユーザとしても公衆WiFiを利用しておくことで、つながらないイライラが解消できます)。その間に通信環境の強化も図れるでしょう

しかし、これは本質的な解決とはいえません。なぜなら現在のデータオフロードは都市圏に偏ったものになりますし、今後IOT(モノのインターネット)が普及してくればさらにデータ通信量が増えます。直近の課題を解決しながら、長期的・社会的な視点から見た対策が必要となっているのです。


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