2012年2月7日火曜日

Facebookが上場申請、今後はソーシャルのインフラを目指す? ビジネスモデルが似ているのも、最大の競合になるのもGoogle

Facebookが上場申請(IPO申請)。Facebookもまた、ソーシャルのトレンドを考えれば社会に影響を与えるかもしれない企業の一つ。今回のIPOで調達した資金と、世界に8億人もいるFacebookユーザーのネットワークを活かして、2012年のIT業界に多方面で関わってくるのでしょう。そして何より、Googleの最大の競合にもなりそうです。

Facebook-Changes-Motivational-Poster-Mark-Zuckerberg-Funny-3 / CleveredFool.com


  収益サマリー
IPO申請にともなって公開された財務情報によると、2011年12月期の売上高は前年比88%増の37億ドル純利益は前年比80%増の6億6800万ドルで利益率は18%。売上高の金額ベースでは他のグローバルITカンパニーに比べれば規模はかなり小さいですが、成長率は2011年のAppleをしのぐほど。純利益は金額ベースでAmazonを上回ります。

この業績を牽引したのは売上高の85%を占める広告収益構成としてはGoogleに似ているようです。ちなみに残りの15%は支払い手数料「Facebook Payment」というサービスで、Facebook上での商取引(ゲームの課金等も含む)の30%を徴収しています。この部分はAppleのiTuneの課金体系に似ています。

この収益を支える重要指標がFacebookユーザ数。2011年12月末現在で世界のFacebookユーザー総数は前年比38%増の8億4500万人、アクティブユーザーは47%増の4億8300万人にのぼります。北米でのユーザの伸びは鈍化傾向にありますが、他の地域では継続してユーザ数を増やしています。


  史上最大 50億ドルの資金調達へ
Facebookの株式公開で資金調達される金額は、最大50億ドル(一部のアナリストは100億ドルにまで達する可能性に触れています)と見込まれています。これはこれまでIT関連企業で最大の調達額であった2004年Googleの16億7000万ドルを大きく上回ります。上場時の時価総額は1000億ドル(Googleは上場時270億ドル、Appleは10億ドルでした)ともいわれており、やや過熱気味な評価も少なくありません。

ちなみにFacebookの時価総額が1000億円だとした場合、日本の企業と比較するとトヨタに次ぐレベル。言い方を変えれば、トヨタぐらいしかFacebookを上回る会社はないのです。時価総額が全てではありませんが、Facebookという企業への市場評価が高いことの表れであることに違いはありません。


  Facebookはソーシャル・インフラとして成長?
Facebookの2012~2013年の事業展開を考える上で、鍵を握るのは次の3要素ではないでしょうか。そしてソーシャルの観点からユーザ接点を広く・深く押さえ、より多くの広告機会・課金機会を狙っていくのではないでしょうか。
 ・世界に増え続けるユーザー ⇒ 拡大から深堀への転換期が迫る
 ・潤沢になる資金力 ⇒ M&Aによるサービスの拡充へ
 ・Open Graphの展開 ⇒ ソーシャルのプラットフォーム・ビジネスを強化

≪世界に増え続けるユーザー≫
ユーザ数は前述の通り、前年比38%で成長しています。このペースが多少鈍化するとしても2012年中には10億人近くまでユーザ数を伸ばすことになるでしょう。そしてそのユーザ数そのものが広告機会や課金サービスの提供機会になるため、収益獲得の可能性は今後もさらに高まります。

ただし、単純にユーザ数を増やしていくことには限界があります。極論を言えばインターネット人口よりはユーザ数は多くはならず、遅かれ早かれ頭打ちになります。すでに北米では頭打ち感が出てきていることから、2013年ごろには先進国を中心にユーザ数の伸び率は小さくなっていくことが予想されます。このときに備えて次なる手、つまりユーザの裾野を広げるのではなく、個々のユーザにより多く利用してもらえるサービスを提供していくことが必要になります。

≪潤沢になる資金力≫
今後、IPOによって得た潤沢な資金が重要な役割を果たします。なぜなら、この資金を使うことで新しい技術に投資したり、有力な企業を買収して機能強化を行うことで、ユーザに対してより訴求力の高い、つまり個々のユーザにより多く利用してもらえるサービスが提供可能になるからです。これは、ユーザ一人あたりに対する広告機会、課金機会が増やすことを意味します。このため今後、M&AもFacebookにとっては重要な戦略と位置づけられていくでしょう。Googleと似た戦略を取ることになるかもしれません。

≪Open Graphの展開≫
Open GraphはFacebookと他のサービスを連携する仕組みです。ユーザはFacebookを起点に多種多様なサービスを使うことができます。サービス提供側はFacebookと連携した形でアプリなどを提供でき、ユーザのタイムライン上に自社のサービスを利用していることがわかるメッセージが表示されます。つまり、Facebookユーザの行動を介してプロモーションが可能になるのです。

これは単に広告を出稿するよりも宣伝効果が高いかもしれません。なぜなら、「友人・知人からの情報」のほうが「広告」や「企業発信の情報」のほうが信頼性が高い、という統計データがあるからです。サービス提供者としてはFacebookと連携するメリットが高くなります。当然、連携しようと考える企業は増えるでしょう。

そしてこのOpen Graphを通じてサービスを提供する企業は、場合によってユーザと取引を行います。この取引に対し、Facebookは「Facebook Payment」によって手数料のとして30%を徴収できます。連携する企業が増えれば、取引が行われる数も増えるわけですから、「Facebook Payment」による収益も拡大していくと予想できます。


  まとめ:FacebookはGoogleと競合していく
Facebookについて整理していくと、Googleと似ている点が散見されます。
 ・広告ビジネスが主要な収益源であること
 ・ユーザ接点を押さえようとしていること
 ・プラットフォームとしてビジネスを行おうとしていること
などがあげられます。ただし決定的に違うのは、その軸となるサービスです。Googleは検索サービスが軸であり、そこから広げたテクノロジーで発展しています。これに対し、Facebookはソーシャルが武器であり、ユーザ同士で情報を流通させ、それを利用するためのテクノロジーで発展していくことになります。

すでにGoogleの新検索サービス「Serch, Plus your world」に対し、FacebookはTwitterやMySpaceのエンジニアと協力して概念プログラム「Don't be evil」を作成しています。こうしたやりあいも始まっていることからも、今後FacebookとGoogleの2社間、そしてその周辺にいる企業の競争は注目を集めそうです。



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