2012年2月18日土曜日

増大するデータ通信量 本質的な解決には技術だけでなく、社会的な視点での抜本的な見直しが必要

ここまでスマートフォンの普及により増大するデータ通信量に対し、どういった対策が講じられているか、そしてどの程度有効なのかを整理してきました。一通り情報を整理したので、ここで改めてまとめてみたいと思います。

The raging battle between Apple's iPhone and Google's Android / Tsahi Levent-Levi



  増大するデータ通信量に対する基本的なアプローチ ⇒ データオフロード+通信量制限で時間を稼ぐ間に環境整備
以下の2つのアプローチを、短期的・中期的・長期的視点から対応していくことが必要となっています。
・インフラの強化 : 膨大な通信量を処理できる基地局・回線の整備
・通信量の抑制 : ユーザが通信を利用する量を抑制


  インフラ強化策の効果 ⇒ 現状最も有効なのはデータオフロード、ただしこれは暫定的処置
・短期的 : データオフロード(公衆WiFi整備) ⇒ 都市圏を中心に有効だが、現在はあくまでも補完的な仕組み
・中期的 : 現行通信環境の強化 ⇒ 携帯キャリアの中心的な取り組みだが、効果が出るのは2012年後半以降
・長期的 : 次世代通信環境の整備(第4世代携帯サービス) ⇒ 期待値は高いが、現在の問題解決策にはならない


  通信量抑制策の効果 ⇒ 現状有効な手立てはデータ通信制限のみ、長期的には社会的視点にたった対策が必要
短期的 : データ通信量制限 ⇒ 暫定的処置として必要だが、その考え方の修正は必要かもしれない
中期的 : 料金体系修正 ⇒ 効果は期待できるがユーザ理解の壁、実施は第4世代携帯サービスが普及してくる2013年ごろ?
長期的 : 端末からのデータ通信最適化 ⇒ 必要なアクションではあるが、最適化されるのはスマートフォン市場が成熟してくる2015年ごろ?


  根本的解決には何が必要か? ⇒ 技術だけでなく、制度の抜本的な見直しも必要
インフラ強化と通信量抑制で、当面のデータ通信量が増加するという問題には対応できそうです。しかし、これは根本的な解決でしょうか。今後、IOT(モノのインターネット)が普及していけば、スマートフォン以外の通信量も増えてきます。IOTが必ずしも携帯回線を使うわけではありませんが、データ通信量をさらに増大させる可能性は否めません。そして将来においても通信障害、さらにはまったく2012年の現段階では予期していない障害を起こすことは十分に考えられます。

では根本的な解決には何が必要でしょうか。すでに携帯キャリアが個別に対応して解決できる問題ではなくなってきています。もちろん、サービス提供者として携帯キャリア各社には設備投資はしてもらうことは必要です。しかし、個々の対応では十分ではないのです。そこで、まずこの通信量の問題を社会的な問題として捉えることが必要です。その上で、官民が連携し、社会的な協力体制の下に通信ネットワークを構築することが必要となります。賛否両論ありますが、総務省のICTタスクフォース「光の道」もそのひとつの可能性でしょう。

ただし、ここで1点注意が必要です。それは、根本的な解決に向けた障壁は何も技術的な問題に限らない、ということです。通信に関する法律や制度、関わる企業の体質も複雑に絡み合います。特に古い制度は、新しい通信ネットワークを構築する際に足かせにもなりかねません。根本的な解決には、もしかしたら現行制度を抜本的に見直すことが必要なのかもしれません。





関連URL)
 総務省 光の道 意見募集