2012年2月2日木曜日

Googleに寄せられる批判 「Serch, plus your world」や新プライバシーポリシーでGoogleは邪悪になった?

「Don't Be Evil “邪悪になるな”」。というのはGoogleが掲げている哲学です。そんなGoogleが発表したのが、パーソナライズ化した検索サービス「Serch, plus your world」と、新たなプライバシーポリシー。今までどおり、何か面白いことになるのかと思いきや、今回は多くの批判を集めています。

Google Logo in Building43 / Robert Scoble


果たしてGoogleは何をしようとしているのか、邪悪になってしまったのか、まずは今起きている状況を整理してみたいと思います。


  「Serch, plus your world」とは ⇒ 個人情報を利用して、ユーザ一人ひとり最適化する検索サービス
Googleの新しい検索サービス「Serch, plus your world」は
   “ユーザ一人ひとりに最適化した検索結果を提供”するサービスです
です。

“ユーザ一人ひとりに最適化した検索結果を提供”するという考え方自体は、情報量が膨大になった昨今、多くの企業・研究者が必要になることを予測していました。セマンティックWebやアナリティクスへの注目度が高まっていることが一つの証拠でしょう。

「Serch, plus your world」は以下の3つのサービスで構成されています。
 ・Personal Results :
  Google+内で共有されている、友達の写真や投稿を検索結果に表示する

 ・Profiles in Search : 
  検索キーワードとして人の名前をいれると、Google+に登録しているプロフィール情報が表示される

 ・People and Pages :
  検索キーワードに関連性の高いGoogle+ユーザやGoogle+ページを表示する

いずれのサービスも
 ・検索するためにキーになる個人情報
 ・検索結果に表示するための個人情報
が必要となってきます。つまり、個人情報を利用することが前提となっているサービスなのです。ちなみにサービスを使う使わないは、個別に設定することも可能です。


  Googleの新しいプライバシーポリシーとは ⇒ 「あらゆる個人情報をサービスに利用する」ことを宣言
「Serch, plus your world」で個人情報を利用する機会が増えることにあわせ、Googleは新しいプライバシーポリシーを発表しています。60以上あったポリシーを一つにまとめるというものであり、
 ・サービス間での個人情報の横断的な利用
 ・ユーザ一人ひとりにあわせて最適化
 ・共有やコラボレーションを簡単に
することで、より直感的なユーザ・エクスペリエンスを提供するとしています。またプライバシーについての“原則”は変わらないとしています。

確かに”原則”はかわらないようですが、個別要素は変わるようです。
 ・個人情報の収集範囲が拡大
  - ユーザから提示する個人情報 : 個人の氏名・メールアドレス・電話番号・クレジットカードなどの個人情報
  - 自動的に集められる情報 : 端末情報、ログ情報、現在地情報、アプリケーション情報など
 ・収集した情報の利用範囲が拡大(すべてのGoogleのサービスで利用)
 ・Googleが収集した情報はユーザーが管理可能
といったあたりが主だったものでしょうか。

なお、「Googleが収集した情報はユーザーが管理可能」という部分は抽象的な表現が多く、具体的にどうやって管理できるのか、どのようなツールが提供されるのかといったことは発表資料だけでは読み取れませんでした。得てしてこういった個人情報管理の仕組みは難解になりやすいため、シンプルにまとめてくれることに期待しましょう。

また、収集した情報を個人が特定できないように集計して提供することはあるとのこと。このポリシーの適用で、統計サービス分野でGoogleを使うことが多くなるかもしれません。


  Googleに寄せられる批判 ⇒ インターネットビジネスの倫理に触れる問題
「Serch, plus your world」にはプライバシー団体やFacebook、TwitterといったSNSから、プライバシーポリシーについては多くのユーザから批判があがっています。要点を整理すると

 ①プライバシーの問題
  ユーザの個人情報にアクセスしやすくなっているため、プライバシーに関する問題を含んでいる可能性がある

 ②独占禁止法抵触の可能性
  Google+の情報に偏って検索結果が表示される(独占禁止法に違反している可能性がある)

 ③ユーザの不安
  あれこれと個人情報が取得されるため、不安

という3点になるでしょう。

「①プライバシーの問題」については米電子プライバシー情報センターが規制当局に対して調査を求めています。この手の問題については、第3者機関が調査し、発表することが必要です。この部分の問題については、調査結果が出ればひとまずは決着がつくでしょう。

「②独占禁止法抵触の可能性」についてはも第3者機関の調査も必要です(①とあわせて規制当局に調査が求められています)。しかし、明らかにGoogle+に偏った検索結果と成ることから、FacebookやTwitterなどは明確に批判しています。そして「Serch, plus your world」のアルゴリズムをベースとした他のSNSの情報も含めて検索結果を表示する、「Don't Be Evil」と名をうった概念実証ソフトウェアを作成しています。明確にGoogleに対して他のSNSが「邪悪になるな!」と抗議のメッセージを送っているのです。

「③ユーザの不安」については、①②が解決されたとしても簡単には解決されません。今回のプライバシーポリシーの変更にあたり、
 ・収集する情報やその利用方法 ⇒ 具体的で明確
 ・ユーザによる自分の個人情報の管理方法 ⇒ 抽象的であいまい
となっています。ユーザ心理としては、
 「自分たちの儲けのために、ユーザの個人情報をいいように使いたがっている」
 「Googleは何をしようというんだ?」
と、不安になるのも無理はありません。一度不安になり、疑問に思ってしまったら、それを修正するにはかなりの時間を要します。つまり、この問題の解決には機能的な側面よりも、ユーザの感情的な側面が大きいため、解決は簡単ではないのです。具体的には
 ・個人情報が安全に利用されているのか
 ・ユーザが不利益を被ることはないのかないのか
 ・明確にメリットが享受されるのか
を説明するだけでなく、
 ・体験を通じてユーザに理解してもらう
 ・理解のうえで、感情的にもユーザに納得してもらう
ということが必要があります。

Googleに対する批判全般を通じてみれば、
 「Googleはインターネットサービスに対する倫理観を欠いているのではないか」
という言葉でまとめられます。「インターネットサービスの事業者として健全な競争を行っているのか」という疑問が投げかけられているのです。


  まとめ:Googleは邪悪になってしまった?
状況を整理すると
 ・Googleは個人情報を利用したサービスの展開を狙う
 ・Googleが独占的な地位を獲得し、市場競争の健全性が失われることに対する危惧
 ・プライバシーに対する明確な説明がなく、社会が不安視
といったところ。シンプルに言えば、
 「Googleが自社の戦略を優先し、市場や社会全体のバランスを見ていない」
という懸念が目立っているのです。“Googleが邪悪でないことはない”という意識が広がっているのかもしれません。

それでもGoogleはマクロトレンドに影響を与えるビッグカンパニーである以上、無視することもできません。上手に付き合っていくことが必要です。そのためにはこの状況を踏まえた上で
 ・Googleが邪悪になったのかどうか
 ・Googleはこれから何をしようとしているのか
 ・Googleとはどうやって付き合っていけばいいのか
といったあたりの考察も必要ですね。当然、インターネット系の企業は十分に理解し、自社の戦略に繁栄する必要がありますし、それ以外の企業や個人も動向を把握しておいて損はないはずです。マクロトレンドに影響=私たちの仕事や生活に影響する、ということなのですから。


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