2012年2月3日金曜日

Gooleは何を目指しているのか ⇒ Googleの戦略から見えてきたのは、世界の情報を押さえる“帝国”の姿

今回の「Serch, plus your world」のリリースやプライバシーポリシー変更は、Googleのモットーである「Don't Be Evil “邪悪になるな”」の精神を守っているものなのでしょうか。それを考えるにはまず、Googleを知ることが必要です。

Google+ / Magnet 4 Marketing dot Net


そこで、「Googleが何をしようとしているのか」を考察してみたいと思います。


  Googleの基本戦略とは? ⇒ ユーザ接点をおさえて広告収益をあげること
簡単にGoogleの戦略を整理しておくと
 ・中核を担うのはテクノロジー(特に検索)
 ・広告によって収益を獲得する
 ・検索の利用可能性を広げ、広告収益を増やすための施策を積極採用

の3点でまとめられるでしょう。
もっとシンプルに言ってしまえば、「ユーザとの接点を全て押さえる」ことがGoogleの目指すところであり、そのためにはあらゆる手段を講じるわけです。なお、ここでは“戦略”という言葉を、「事業活動を通じて価値を創造し、収益を獲得するための方向付け」という意味で使っています。

特に買収については、2011年だけでも79社(総額20億ドル)にものぼっています。買収ができる企業に対しては、その資金力にものを言わせ臨んできます。

また、買収ができない企業(大きすぎる企業、または買収するほどの価値はない企業)に対しては、Googleは自分のところのサービスに取り込もむための手を尽くしてきます。例えば検索アルゴリズムをYahoo!Japanに提供していたり、スマートフォン開発をしたいメーカーにAndoroidを提供したり、アプリ開発をしたいベンダーに開発環境を提供したりして、「Googleと付き合わざるを得ない」状態をつくっていっているのです。


  Googleの今後の戦略は? ⇒ 当面はモバイルとソーシャルを主戦場に、そしてローカルへ
Googleの今後の戦略キーワードとして
 ・モバイル
 ・ソーシャル
 ・ローカル
の3つをあげています。モバイルはAndorid、ソーシャルはGoogle+の展開を主に狙っています。ローカルではO2O(Online to Offline : 現実世界のサービスとつなげること)を狙っています。


  モバイルは継続して注力、IOTも視野に
2011年はモバイルにかなり力を入れてきました。iOS(iPhone/iPad)を展開するApple、Windows8を投入してくるMicrosoftと競争は続きますので、この流れは当面続くでしょう。基本戦略に当てはめて考えると
 ・Andoroid OSのテクノロジーを軸に
 ・フリーで提供することで“モバイル端末”というユーザ接点を押さえ
 ・モバイルアプリ/Webでの広告機会を増やす
というものになります。しかも今後スマートフォンやタブレットだけでなく、あらゆるユーザデバイス、そしてIOT(モノのインターネット)へと幅を広げていくでしょう。2012年にGoogle TVを展開することが、一つの根拠です。

また、弱点であったハードの部分(自社生産していないため)についてもモトローラを買収して補完し、ソフト・ハードを一貫して提供してきます。この点もモバイル、さらにはユーザデバイス全般に注力している証拠の一つでしょう。今までパートナーだったメーカ企業とも、ある部分では競合関係をつくり、ある部分は協力関係を残すことで、市場に対する支配力を高めていくのではないでしょうか。


  2012年はソーシャルにも注力、遅れを取るSNSの巻き返しを狙う
ソーシャルについては2011年6月にGoogle+をリリースし、2012年は本格的にSNSサービスを展開していきます。ただし、FacebookやTwitterなどに比べると、かなり大きく遅れをとっています。ユーザ数で見ればGoogle+は9000万人を越えたところですが、Facebookは8億人という数字です。したがってGoogle+は、FacebookやTwitterに対し明確に差別化をして、ユーザを獲得し、囲い込んでいかなければ行けません。そのために
 ・より深く広くユーザのニーズに応える仕組みを提供し
 ・ユーザのインターネット上のコミュニケーションをおさえ
 ・より訴求性の高い広告機会をつくる(広告機会の数ではなく質の向上)
といったところを狙っていると考えられます。

つまり、ソーシャルではGoogleの強みを活かした付加価値がより明確に必要なのです。その中心的な存在が「Serch, plus your world」であり、そのための準備がプライバシーポリシー変更なのです。プロモーションも積極的であり、2012年に入ってから
 ・地図ゲームをプロモーション ⇒ エンターテイメントで訴求
 ・オバマ大統領がSOPAについての議論 ⇒ CSRで訴求
 ・登録の年齢制限を13歳に引き下げ ⇒ 利用ハードルを下げて訴求
などを展開しており、日本でもAKB48とのタイアップが話題になっています。



  ローカルはトライアル中、モバイルとソーシャルで地盤固め
ローカルとは狭域、つまり“地元”を対象とした「そこに行かなければ利用できない」サービスであり、リアルに触れられるサービスのことを指します。地域の商業施設、商店街、農業などをイメージすればよいでしょう。

このローカルについては、GoogleショッピングやGoogle Marchant Centerなどの展開をはじめてはいますが、“これから”といったところ。Androidのようなコアになるテクノロジーが見えていませんし、サービスの知名度もまだまだ低いのが実情です。

ローカルは2012年はトライアル期間であり、2013年で基盤をつくり、本格化するのは2014年以降になるでしょう。まずはモバイルとソーシャルで地盤固め、というのが2012〜2013年の流れと予測しています。なぜなら
 ・モバイルによって地域の人びとの情報に対する接点を押さえ
 ・ソーシャルによって地域の人びとが使う情報の流れを 押さえ ることで
 ・リアルなサービスの利用に誘導する仕組みとして“ローカル”が機能する
というシナリオが描けるからです。


上記から考えると、モバイルのAndorid OSから発展し、Google+の情報に接続できるIOT(モノのインターネット)のOSをコアテクノロジーにする、という可能性も考えられます。
 ・IOT OSを無料で配布して
 ・世界中のメーカーに製品を開発して貰い(もちろんGoogle自身も)
 ・農場や商店街など私たちの暮らす地域社会で
 ・私たちが普段使うものをIT端末に変え(窓、鏡、ドア、キッチンなど)
 ・情報を提供・収集するネットワークを作る
ということを狙ってくるかもしれません。


  まとめ:Googleは世界中の情報を握る“帝国”を目指している?
Googleがローカルまでの戦略を遂行し、目的を達成した場合にどうなるでしょうか。
 ・モバイルで、個々人が使うユーザデバイスからの情報を
 ・ソーシャルで、インターネット上のコミュニケーション情報を
 ・ローカルで、人びとのリアルな生活活動の情報を
Googleが押えることになるのです。つまり、世界中の情報のほとんどがGoogleに集まるようになるのです。

政治、経済、社会生活、テクノロジーすべての分野でGoogleの影響はとてつもなく大きくなり、“帝国”とも言える状態になるかもしれません。とはいえ、すでにテクノロジー分野から社会に影響する存在ではあるのですが。

独占的な地位に立ち、社会的な影響を強めるからこそ、「Don't Be Evil “邪悪になるな”」の精神をGoogleには貫いて頂きたものですし、貫くべきだと考えています