2012年2月23日木曜日

【ネタバレBookReview】Facebookマーケティング戦略

池田 紀行,株式会社トライバルメディアハウス
翔泳社
発売日:2011-07-16
ユーザ数が8億を越え、IPO申請もしたFacebook。もはやその名前を知らない人はいない、というほどに成長したSNSです。そのFacebookを利用したマーケティング戦略について書かれているのがこの本。Facebookの機能的な解説ではなく、いかに企業が活用すべきかをマーケティングの観点から体系的にまとめています。また、企業での活用事例も多数掲載しているためイメージしやすい(当該企業のFacebookページを見ながら、ならなおさらです)。Facebookでのマーケティングを考えている、または行っているなら一読の価値がある本です。

以下、要点と解釈の整理です。

  マーケティング上のFacebookの位置づけ
FacebookはOne2One型マーケティングとして位置づけられ、顧客接点を持っていくためのマーケティング手段として位置づけられます。とくに潜在顧客の発掘と、既存顧客のファン化(定着化)に効果を発揮します。

なお、ソーシャルメディアは大別すると
 ・アーカイブ型ソーシャルグラフ : 築き上げられたユーザ同士の“関係性”が大事
 ・アーカイブ型インタレストグラフ : 蓄積された情報が大事
 ・フロー型ソーシャルグラフ : 関係性の広がりが大事
 ・フロー型インタレストグラフ : 情報の広がりが大事
の4つに分類され、Facebookはアーカイブ型ソーシャルグラフに位置づけられます。


  Facebookのマーケティング利用目的
まず、以下の2点はよく陥りがちな誤りであり、注意が必要です。
 ・プラットフォーム利用(Facebookの利用)の目的化
 ・戦術の目的化(いいね!の獲得数など)
という、本質的なマーティン具目的を見失った、手段の目的化に注意しなければいけません。

そのうえで、Facebookのマーケティング利用の目的(ソーシャルメディア全般にいえることではありますが)
 ・ブランディング
 ・広報
 ・プロモーション
 ・サポート
の4点に集約されます。そのためのアプローチとして
 ①リサーチ : 顧客の情報や商品に対する意見の収集
 ②コミュニケーション : 顧客との接点を作り、企業メッセージを伝え広げる
 ③活性化 : 顧客の活動を活性化させ、影響力を高める
 ④支援 : 顧客の活動をサポートする
 ⑤販促 : ビジネスプロセスに組み込み、商品やサービスの提供につなげる
を順に行っていくことが必要になります。

また、そのアプローチは商品・サービスによって分かれてくる事になります。
 ・買回品・最寄品で機能によって選択される商品 : 食品、日用品など
   ⇒ 顧客へ高頻度にアプローチするるための戦術として利用

 ・高額品で機能によって選択される商品 : 保険、自動車など
   ⇒ 顧客との関係作りから、理解を得るための戦術として利用

 ・高額品で感性的に選択される商品 : ブランド品など
   ⇒ 顧客をファンにするためのイメージ戦術で利用


  Facebookにおめるマーケティングツール
Facebookで利用できるマーケティングツールは具体的に以下の5つです。
 ・Facebookアプリ : 占いや○○診断、ゲームなど
 ・Facebook広告 : スポンサー広告、スポンサー記事など
 ・ソーシャルプラグイン : 他のサイトに仕込んだ、いいね!ボタンなど
 ・オープングラフAPI : Facebookと他のサイトを連携
 ・Facebookページ : コアになる情報発信ページ


  Facebookによるマーケティング戦略の進め方
基本的にはマーケティングの基礎を踏襲し
 ・ゴール設定 : Facebookによるコミュニケーションで何を得るのか(いいね!を得て、何をするのか)
 ・コンテンツ定義 : どのような情報をFacebookから発信するのか
 ・運用体制定義 : どのような体制で、Facebookを運用するのか
 ・構築 ; Facebookページの開設と必要機能の整理
 ・運用 : Facebookの運用をPDCAサイクルにしたがってまわす
という5つのステップが必要となります。結局のところ、“Facebookで何がしたいか”がクリアでなければ、コンテンツも運用体制も決まらず、構築も運用も意味がないということです。目的を明確にする、という基本を忘れてはいけないわけです。

なお、最終的に運用で重要になるのがKPI/KGIです。運用業務の効率を把握するためのKPIと、目標の達成度合いを測るKGIを明確に定義する必要があります。実際に運用を始める前に明確に定義しなければいけません。
≪KPIの例≫
 ・リーチ指標 : ファン数、PV、UUなど
 ・エンゲージメント指標 ; いいね!やコメント、シェアの数
 ・話題性の指標 : ユーザの投稿やコメントの内容

≪KGIの例≫
 ・ブランド指標 : 認知度、純粋想起率/順位、ロイヤリティなど
 ・行動指標 : 来店数、商品動向など
 ・機能評価指標 : ユーザ満足度など


  Facebookによるマーケティングを成功させるために
Facebookのマーケティングにより成果を得るには、PDCAの徹底が必要です。このときKPI/KGIに基づいて
 ・チャネルの検証 : 外部リンク、Facebook内の検索、Facebook内広告、ファンによるコメント
 ・コンテンツの検証 : 投稿内容、タイミングなど
を改善していくことが必要です。

なお、コンテンツについては
 ・画像の入った直感的な、わかりやすいイメージとなっている
 ・質問形式となっている
 ・質問は選択肢が用意されている
という3つのポイントを押さえていくことで、より多くのファンにリーチできる可能性が一般的にわかっています。

しかし、なによりも成功させるためには行動することが必要です。「Done is better then perfect」というFacebookの哲学の通りです。あれこれ試しながら、改善し、よりBetterにしていくという進め方を徹底する = BPM的な継続改善のアプローチを行うことが必要不可欠なのです。