2012年2月25日土曜日

【ネタバレBookReview】 顧客に愛される会社のソーシャル戦略

跡部 徹
技術評論社
発売日:2011-12-27
SNSの普及率が45%(ICT総研発表資料より)となり、企業でもマーケティング分野を中心に利用が注目されている昨今、企業はいままでのマス・マーケティングとは異なる距離感でビジネスを行う必要が出てきます。つまり、いかに“愛される”企業になるか、顧客をファンにするか、ということがポイント。キーワードは「ソーシャル・マーケティング」。では具体的にソーシャル・マーケティングではどのようにSNSを位置づけ、扱い方を考え、顧客との関係性をつくっていくべきなのか、この本にはその示唆があります。

以下、要点と解釈の整理です。

  SNSが登場したことによるマーケティングの変化
SNSが登場したことで、マーケティングに変化が起きています。これはコトラーの「マーケティング3.0」でも触れられている通り、
 ・1990年代以前 : マス・マーケティング(プロダクトアウト)
 ・2000年代 : マス・マーケティング(マーケットイン)
 ・2010年代 : ソーシャル・マーケティング(顧客本位)
と移り変わってきています。そしてこの顧客本位(ソーシャル)とは、商売の原点回帰。つまり
 ・いいものをつくり(自分が愛すべきも商品・サービスをつくり)
 ・目の前のお客様を大切にし(一人ひとりのお客様を愛し)
 ・長くお客様とお付き合いする(お客様に愛される存在になる)
ということが必要になっているのです。発想としては「日本でいちばん大切にしたい会社」にとても近いわけです。ビジネスの根幹に立ち戻ってきているわけです。

しかし、こうしたアクションは非常にコストと時間がかかります。そこで活用すべきなのがSNSです。SNSを利用することで、今まではコミュニケーションが困難であった顧客とも、丁寧に深く接することができ、関係性を気付いていくことができるのです。


  基本的なアプローチ
ソーシャルでのマーケティングは
 新規顧客 ⇒ ロイヤルカスタマー ⇒ ファン ⇒ エバンジェリスト
と顧客との関係性を向上させていくことが必要になります。なぜなら、ファンやエバンジェリストは自社の商品やサービスをよく知り、かつ周囲(他の顧客)にも影響をおよぼすことから、非常に高いプロモーション効果と売上UPが期待できるからです。

このとき、考慮すべきマーケティングアプローチは、AIDMAでもなく、AISASでもなく、SIPSです。SIPSとは、
 S:Sympathy 共感
 I:Identify 確認
 P:Praticipate : 参加
 S:Share & Spread : 共有と拡散
のプロセスを継続することで顧客接点が拡大し、関係性が向上していくわけです。


  ソーシャル・マーケティング成功のポイント
ソーシャル・マーケティングに成功企業から、成功に向けたポイントは
 ・自ら実行する(アウトソーシングしない)
 ・小規模でフレキシブルに運用
 ・PDCAサイクルによる継続改善
 ・社内に成果をアピールして、高い自由度を維持
 ・社内での横のつながり
 ・Webを通じた向こう側にいる人を感じる、感じさせる
というところが共通しています。

しかしなによりも、マーケティング目的が明確になっており、SNSを利用することが目的になっていない(手段の目的化をしていない)ことが重要になります。そしてその目的は大きく、
 ・顧客同士のコミュニティ形成 ⇒ 日常的な商品・サービス接点の拡大(日常品向け)
 ・顧客サポートの充実 ⇒ 顧客との関係性の強化(高級品など)
 ・エバンジェリストによる拡散 ⇒ いわゆるソーシャル・コマース(ブランド品など)
の3つにわかれます。こうした目的それぞれに必要なKPIを設定し、PDCAサイクルをまわしていくことで効果が得られるわけです。


  ソーシャル・マーケティングと自社サイト・サービスの融合
ソーシャル・マーケティングはそれだけで完結するものではなく、関連する自社サイトやサービスと融合していく必要があります。このとき具体的な施策としては以下の4つの方向性を考慮して、戦略策定を行うことが必要となります。
 ・自社サイトにおけるユーザ・エクスペリエンスの改善
 ・自社のファンとのコミュニティ形成
 ・新サービス開発への活用
 ・O2O(Online to Offline)の導線としての活用

最終的に企業として成果をあげるためには、SNSを単体で考えるのではなく、ソーシャルという視点から全体最適を図ることがソーシャル・マーケティングでは必要になるわけです。