宇宙人がやってきて、人間にチップを埋め込む。10~20年ぐらい前にオカルト系のネタでよく見かけていました。伝説的なドラマ「Xファイル」でもそのような内容があったように思います。映画「マイノリティレポート」でもありました。しかしもはや“人間にチップを埋め込む”ことは、IOT(モノのインターネット)の一つとして現実の話になっています。
最先端医療では、人間にチップを埋め込んで投薬
2012年2月16日付のアメリカ医学誌サイエンス・トランスレーション・メディスン電子版で驚きの発表がありました。発表したのはハーバード大学などの医療研究チーム。その発表によると、人体に自動的に薬を放出するマイクロチップを埋め込み、骨粗しょう症患者を安全に治療することに成功したとのこと。
チップ自体は13mm×15mm程度。無線通信で外部とつながっており、外部からの指示からあらかじめチップにプログラムされた内容にしたがって、自動的に投薬するというもの。人間とITが始めて完全に一体になった事例ともいえるでしょう。
ペットへもチップ、不測の事態に備える
日本ではすでにペットにチップを埋め込む「マイクロチップ」というサービスが始まっています。これはペットが迷子や事故などの不慮の事態にあってしまった場合に、ペットを助けることを目的としています。収容された動物病院や保護センターでこのマイクロチップから情報を読み取り、飼い主と連絡が取れるようにする仕組みなのです。東日本大震災以降“何かあったときにペットが行方不明にならないように”と、利用する飼い主が増えているそうです。
チップは長さ11~13.5mm×直径2mmと細長い形状をしており、アレルギー反応がおきない素材で作られています。電池も不要であるため、一度埋め込めば半永久的に使用することができます。
デバイスがなくなる日が来る? ⇒ その前に本当に必要なものを考えるべき
こうした人体や動物にマイクロチップを埋め込む技術は今後も発展していくでしょう。テクノロジーの進化によって、より小型化し、より高精度になっていくことは、これまでのITの進化をみれば明らかです。
ここに今開発中のテクノロジーが加われば、いったいどのような世界がくるでしょうか。
・いろいろな情報を映し出せるコンタクトレンズ
・脳から直接操作できるブレーンインタフェース
・ゲノムを利用した生体認証
などの技術を掛け合わせたら、私たちは自分の体自体が常にインターネットに接続し、コンピュータを扱えるようになるのかもしれません。もしそうなれば、より個人の行動やニーズにあったサービスが提供されるようになりますし、犯罪抑制や健康管理などにも大きく貢献することになります。すべての人がマイクロチップの情報で管理される世界。まさに「マイノリティーレポート」や「Xファイル」が描く世界です。人体や動物へマイクロチップを埋め込む仕組みは、こうした世界のはじまりを意味しているのかもしれません。
しかし、それは手放しで喜べるものでしょうか。確かに非常に便利にはなります。ただ、それと同時に人間としてもともと持っていた能力を失ってしまうかもしれません。テクノロジーを利用して生きているはずだったものが、テクノロジーに生かされている状況になるかもしれません。この先は単純にテクノロジーという側面だけで見るのではなく、私たちにとって本当に必要なものは何かを考えることが求められるのではないでしょうか。
関連URL)