※2012年3月8日に開催されたセマンティックWebコンフォレンスのパネルディスカッションに出演した際の資料解説です。
変化する情報に対する価値観への対応と信頼の確保によってビジネスの土台を築き、その上でニーズを捉えるための視点をもったとしても、まだひとつ大きな問題があります。その視点の先に見ているものは、“ビッグデータ”の社会であり、その社会に潜んでいるニーズを探し出してこなければいけないからです。セマンティックとLODによって“ビッグデータ”を手なづけたとしても、それは広大な海に沈んだ宝を探しに行くようなものです。闇雲に探しても簡単には見つけることはできません。
そこで必要になるのが、ビジネスを実現するための明確な「方向性」です。言い方を変えれば、実現するビジネスのコンセプトを明確にすること、ビジネスの実現によって解決すべき社会の課題を明らかにすることが必要なのです
ではどうやって「方向性」を定めればよいでしょうか。そのヒントは
・技術・科学的な課題の解決
・利用者・生活者の課題解決
・経済・経営的な課題の解決
・社会構造的な課題の解決
の4点にあります。
技術・科学的な課題とは、新しい技術を実現したり、科学的な研究の成果を得たりするために解決すべき課題です。より高度な技術や科学を実現する手段を提供する、と言い換えることもできます。例えば原子力に変わる新しいクリーンエネルギーの開発、エイズの治療薬の開発といったものが挙げられます。
利用者・生活者の課題解決とは、要するにユーザの利便性の向上です。このとき、まずユーザの商品やサービスの利用形態、生活習慣などを踏まえなければいけません。その上で、すでにユーザが抱いている不満を解決する、またはまだユーザが気づいていない改善・向上の可能性を提案する価値を提供していくのです。ユーザエクスペリエンスを追及していく、という言い方もできるでしょう。身近なところでは、多種多様なスマートフォンのアプリもその例になります。
経済・経営的な課題の解決とは、簡単に言ってしまえば企業の売上げや利益が上がるようにすることです。国という単位で考えればGDPの成長となります。シンプルな言葉でまとめれば、“戦略と実行”を提供することになります。企業のコスト削減や収益拡大のためのマーケティング活動の提供などが具体例となります。
社会構造的な課題とは、医療、エネルギーや社会保障などを含めた社会システムそのものの課題です。日本の年金問題、少子高齢化、地域経済格差、医療格差などの具体例には尽きません。原発問題を含む環境問題もそのひとつです。今日、私たちを取り巻く複雑な社会問題の解決する価値を提供していくのです。
これら4つのヒントをもとに、より具体的に、明確にイメージできるレベルで「方向性」を定義するのです。そうすることで変化する価値観に対応し信頼を得ながらニーズを捉えた提供価値、すなわちビジネスが実現できるのです。
【目次】