では、“ビッグデータ”のリスクを乗り越え、その可能性を手にするために私たちはどうするべきでしょうか。私たちはどのように“ビッグデータ”と対峙すればよいのでしょうか。
答えはシンプルです。“ビッグデータ”を手なづけるのです。“ビッグデータ”を構成する情報を図書館の本棚のように整然と管理し、優秀な司書のように必要としている情報だけを的確に提供できる仕組みを実現するのです。
次の問題は、どうやって“ビッグデータ”を手なづけるかです。具体的に“ビッグデータ”を構成する情報を整理して、ユーザに必要な情報を提供する方法が必要なのです。
その解決策は、蜘蛛の巣をイメージすると見えてきます。蜘蛛の巣は、草木や壁を糸でつなぐことを繰り返して作られます。巣は非常に丈夫な構造をしており、ちょっとぐらいの雨風では壊れることはありません。蜘蛛は巣の上を自由に動き回り、ひとたび獲物がやってくれば巣の上であっという間に捕らえてしまいます。この蜘蛛が進化の過程で手に入れた知恵を、“ビッグデータ”を手なづけるために拝借するのです。
つまり、
・草木の代わりに、“ビッグデータ”を構成する情報を扱い
・糸の代わりに、ネットワークで繋ぎ合わせ
・巣の変わりに、情報の関係構造(オントロジー)を定義し
・蜘蛛が自由に巣の上を移動できるように、情報をオープンに自由に利用できるようにし
・蜘蛛が獲物を捕らえるように、ユーザの問いに瞬時に解を出す
そんな仕組みを作ればよいのです。つまり、WWWの発明者であるティム・オライリーが提唱し続けているセマンティックが“ビッグデータ”を手なづけるための手段なのです。
しかし、これだけの仕組みを一気に実現することは簡単ではありません。“ビッグデータ”の「速さ」「量」「多様性」「複雑性」をすべて手なづけなければいけないためです。実現のためには段階が必要です。では何から始めるのか。すでに取り扱うべき“ビッグデータ”の情報は存在しています。そうであれば、次に取るべきアクションは“つなぐ”こと。そして関係構造を整理して、オープンにしていくことです。つまり、 “ビッグデータ”を手なづけるためのステップとして、セマンティックを実現するためアクションとして、情報をオープンに繋いで自由に利用できる環境を作るLOD(Linked Open Data)の取り組みがまず必要なのです。
【目次】