2012年3月27日火曜日

スマートに利用するアプリ「すぐくるタクシー」 ⇒ 拡張すればタクシーはスマートシティの主要交通システムに?

タクシーもスマートフォンアプリで。東京無線協同組合、富士通テン株式会社、株式会社メイテツコムはスマートフォンからタクシーを呼ぶことができるサービス「すぐくるタクシー」を2012年4月1日より開始します。苦戦が強いられ続けているタクシー業界の新風となるでしょうか。


  「すぐくるタクシー」とは ⇒ タクシー予約をシンプルにする実用アプリ
「すぐくるタクシー」はiPhone、Androidのアプリからタクシーを呼ぶことができるサービスです。対象は2012年4月1日時点で東京無線のタクシー4000台。システム自体は他のタクシー会社でも利用できるとのことなので、将来的には対応するタクシー会社を増やしていき、全国1万6000台の導入を目指しているとのこと。

利用方法は、アプリを起動して現在位置を指定するだけでOK。当然外出先で、例えば買い物帰りに街中でタクシーを予約することも簡単にできてしまいます。電話でオペレーターを介さずに、30秒~40秒で配車されるタクシーが確定。あとは待っていればタクシーがやってくるという仕組み。ちなみに予約したタクシーがどのあたりまで来ているかも確認することができます。


  タクシー業界の将来は ⇒ スマートシティの主要交通システムに?
もしこの「すぐくるタクシー」のようなサービスが広まったら、タクシー業界はどうなるでしょうか。すこし極端ですが、全てのタクシーで適用したと想定して考えて見ましょう。

一つの可能性として、タクシーの乗車率の向上が図れます。アプリからの予約を前提に各タクシーが配車されることによって、空車の状態で走っているタクシーを減らすことができます。

タクシーの空車状態が減る、ということはタクシー自体の走行距離を減らすことができるということでもあります。車が走るために必要なガソリンなどのエネルギーの節約につながり、かつタクシー車両自体を長持ちさせることにつながり、タクシーの乗務員が連続して運転する時間も削減することもできるのです。つまり、タクシーを運行するための原価を大きく削減することが可能になるのです。また、走行距離を減らすことができれば、ガソリン車・天然ガス車に比べて連続走行距離が短いEV車両を利用することもできます。再生可能エネルギーによる充電を前提に考えれば、エネルギーの側面での原価はさらに抑えることができるかもしれません。

タクシーの原価が下がったらどうなるでしょうか。当然、利用料金を引き下げることも可能になります。無駄に走る必要もないわけですから、バスの運賃程度の料金設定にすることができるかもしれません。そうなれば利用者としてはタクシーをとても利用しやすくなります。タクシー自体の利用率を押し上げ、タクシー業界全体の売上高は今よりも高いものになるかもしれません。

タクシーによるエネルギー利用の適正化、それを支えるICTインフラの整備がされれば、もしかしたらスマートシティを担う交通システムの一つとしてタクシーが利用されるようになっているかもしれません。


  現実的な課題は? ⇒ 複雑な業界構造も越えた、タクシー事業者へのメリット提示が不可欠
では、実際に「すぐくるタクシー」のようなシステムを導入し、タクシーの運行を最適化することは可能なのでしょうか。全国のタクシーの台数は法人・個人を合わせて約26万5千台(2010年12月 国土交通省発表)。そのうち法人が約22万2千台、個人が約4万3千台。東京都内だけでも約4万台のタクシーが走っています。これに対し、「すぐくるタクシー」の目標値は全国で1万6000台、東京無線のタクシーは4000台。全体の1割にも満たないタクシーにしか適用されません

また、当然ながら対応するタクシーには「すぐくるタクシー」に対応したカーナビなどのシステムを導入しなければいけません。この導入コストはタクシー事業者が負担することになります。法人ならまだしも、個人では導入に向けてのハードルは高くなります。法人についても都心部ならばまだよいですが、地方のタクシー会社では投資余力がないかもしれません。

加えて、タクシー業界にはいろいろな組合もあり、複雑な利権も絡んできます。タクシーが安く運行できると、目先の利益が減って困る他の交通機関があるからです。

「すぐくるタクシー」自体がタクシー利用のスタンダードな形になるには、タクシー事業者サイドの投資負担の軽減が不可欠でしょう。それと同時に、タクシーの利用率が向上するという、タクシー事業者にとってうれしい事実を作っていくことが必要です。さらにスマートシティの主要交通システムになるためには、タクシー業界だけでなく、行政なども含めた多方面からのサポートが必要となります。特に利権関係の解決を図らない限りは、実現は難しいでしょう。これはタクシーに限ったことではないですが。


  まとめ:とりあえず使っといて損はなし、将来の話はスマートシティがらみで
将来の話をすると難しくなりますが、少なくとも東京在住でタクシーを利用することがある方はとりあえず自分のスマートフォンに「すぐくるタクシー」のアプリを入れておいて損はありません。飲み会で遅くなった日には非常に重宝しそうです。

「すぐくるタクシー」を発展させていけば将来的なスマートシティの交通システムとしてタクシーを活用できる可能性があります。しかしながら、これはタクシー業界だけの議論だけでは終わりません。より包括的な視点で、社会の交通システムそのものを見直すアプローチをしていくことが必要でしょう。



関連URL)