2012年3月14日水曜日

企業の約9割がBCPに関わる取り組み ⇒ しかし災害対策だけがBCPじゃない、再考が必要

東日本大震災をうけた動きの一つとして目立ったのが、企業のBCPに関する動き。2011年は約9割の企業がBCPの策定や見直しを行っているようです。

/ yto


  BCPとは ⇒ 災害対策だけではない
BCP(Business Continuity Plan)は日本語にすると事業継続計画。つまり、会社が何かしらのトラブルが発生したときでも事業を継続していけるように準備しておくリスクマネジメントの考え方の一つです。

では、このトラブルはどういったものが対象になるのでしょうか。それは東日本大震災のような自然災害だけではありません。交通事故によって事業の鍵を握る人物が死亡してしまう、クラッキングによりサーバーがダウンしてしまう、取引先で不渡りが発生しキャッシュフローが一気に悪化する、といった事業の継続を困難にする事象すべてが対象になるわけです。


  きっかけは東日本大震災 ⇒ 企業規模に関係なくBCPへ取り組み
東京海上日動リスクコンサルティングの企業の危機管理に関する調査によると、震災後BCPを策定、または策定する予定の企業は41.4%。見直した、または見直す予定の企業は46.4%。両方をあわせると87.8%もの企業がBCPに関してアクションを起こしていることになります。震災前は5割弱程度であったため、企業のBCPへの意識の高さが伺えます。その他の主な集計数値は以下の通り。

 BCPの策定・見直しを行っている企業
  ・全体 : 87.8%
  ・従業員数1000人以上 : 95.4%、
  ・1000人未満の中堅企業 : 82.2%

 BCPとしての具体的な対策(複数回答)
  ・部品・商品の調達先代替方針確立 : 46.4%
  ・帰宅困難者対策 : 39.4%
  ・対策本部訓練 : 38.5%

この背景には、東日本大震災を受けて事業継続が困難になる事象が多発したことが挙げられます。簡単に思い返しても、東北エリアに工場や支社をもっている企業はその機能を停止せざるを得ませんでした。また、東京でも交通網が麻痺し、電力が逼迫したことで、思うように事業活動ができない、工場の稼働率も下げなければいけない、ということも起きました。従業員が心理的な不安にかられ、会社をやめて西日本に移住したケースもあります。こうした事象に対し、多くの企業が十分な備えがありませんでした。この反省から、BCP策定・見直しの動きが目立っているようです。


  まとめ:本当は不十分なBCP、リスクマネジメントを再考すべき
BCPに対する検討の動きは多くなっていますが、ひとつ大きな違和感があります。BCPは事業継続のための計画。しかしながら、ほとんどの企業で検討していることは、災害が起きたときの対策ばかりなのです。もちろん、災害対策は重要ですし、優先度も高く設定すべきでしょう。しかしながら、BCPを語るのであれば災害対策は一要素に過ぎません。

このポイントは非常に重要です。リスクマネジメントの甘さがここにあると考えています。一つの側面からだけ見て、盲目的に単一的な対策をとる。それで果たして十分でしょうか。震災、という大きな教訓から学ぶべきことは、その程度でよいのでしょうか。

震災から災害対策の必要性を私たちは痛感しました。そして、その対策は事業継続計画のひとつであることは気づきました。このとき、周囲を見渡せば他にも事業継続を困難にする要素もたくさん転がっています。俯瞰的に捉えて、評価して、その結果、災害対策を優先的に行うという結論に至れているのでしょうか。東日本大震災から1年がたった今、今一度足元を見直したほうがいいのかもしれません。