日本経済新聞出版社
発売日:2009-11-10
では、どうやってこれだけ複雑な競争環境で生き残っていくか。そのためにはビジネスモデルの創造的破壊を行い、そして新しい可能性を開いていくことが必要になります。この「異業種競争戦略」には、そのためのフレームワークが整理されており、経営戦略・事業戦略を考えるためのベースとすることができます。
以下、解釈と要約です。
異業種間競争とは
異業種間競争とは
・異なる事業構造をもつ企業が
・異なるルールで
・同じ顧客や市場を奪い合う競争
と定義されます。競争の最大のポイントは“バリューチェーン”と“ビジネスモデル”。この2つをどのようにデザインするかがかぎになります。
バリューチェーンの再構築
まず、異業種間競争を戦っていくには、対象の市場でのバリューチェーンの再定義が必要となります。生産から消費までの一連の流れ、ライフサイクルをデザインしなおすのです。もともとあるバリューチェーンの構造に変化を加えることで、自分の強みを活かして戦える環境を作ってしまうことが目的です。そのためには
・省略 : プロセス・ステップを減らす
・束ねる : プロセス・ステップをまとめてしまう
・置き換える : プロセス・ステップをまとめてしまう
・選択肢の広がり : プロセス・ステップの選択肢を増やす
・追加する : 新たなプロセス・ステップを作る
という5つの方策が取れます。
ビジネスモデルの再検証
バリューチェーンをふまえたうえで、ビジネスモデルの再検証を行います。そのためには自社と競合について、以下の点について調べ・比較することが必要になります。そして相手の弱い部分に自分の強みをぶつけに行くことが必要です。
・顧客への提供価値:
- 同じ価値×同じ手段
- コスト構造の違い
- 事業目的の違い
- 同じ価値×異なる手段
- 技術の違い
- 提供プロセスの違い
- リアル/サイバーの違い
- 所有/利用の違い
- 異なる価値×異なる手段
- 時間を奪う : 顧客の時間を占有する
- 空間を奪う : 顧客がいる場を占有する
- 財布を奪う : 顧客が使うお金を占有する
・競合関係の把握:
- 他業界からの参入者
- ベンチャーの存在
- 業界の異端児・イノベーター
・戦う場所・戦い方のスタイルの把握:
- 局地戦
- スモールスタート
- コバンザメ戦法
- アキレス腱を突く
- 全面戦争
- シェア競争
- デファクト・スタンダード
- 市場リプレース
ビジネスモデルの確立
ビジネスモデルを再検証した上で、新たなビジネスモデルを確立していくことが必要です。そのためにはまず、顧客に提供する価値を定義し、そして儲けの仕組みを確立することが必要です。顧客に提供する価値、とは「顧客が何をしたいか」を突き詰めた結果から得られる、最終的に顧客が得たいと思っている価値、を捉えることが必要です。
儲けの仕組みとしては、大きくは4つのパターンがあります。
・トールゲート(料金所) :
利用量に応じて課金する仕組み。
だれもが利用するサービスや商品に有効。
・イネーブラー(撒きえ) :
自分のサービスに誘引する仕組みです。
フリーミアムが該当するでしょう。
・エンラージメント(拡張) ;
一度取り込んだ顧客とのビジネスを広げる仕組み。
プレミアムサービスを用意しているパターンが該当します。
・ブロックプレイ(妨害) :
競合の商品を選択しないように仕向ける仕組みです。
顧客の選択肢を自社に向ける、囲い込み戦略です。
新しいビジネスのルールを確立する
確立したビジネスモデルは、競争優位性を発揮し、維持していくことが必要です。しかし、ビジネスは相手のルールに従っていたのではなかなか競争優位性を発揮することはできません。そこで取るべきアクションは、ビジネスのルール自体を新しく作ってしまうことです。
そのためには
・潜在ニーズを顕在化させて、ルールにしてしまう
⇒ 顧客に新しい価値観・常識を作る
・顧客の問題を解決して、ルールにしてしまう
⇒ 顧客の目を新たな解決方法に向けさせる
・顧客を細分化して、ルールを作る
⇒ よりニッチなニーズを押さえてローカルルールを作る
という3つのアプローチがあります。
実現にはリーダーシップが求められる
バリューチェーンを再定義し、新たなビジネスモデルを構築して、異業種競争に挑んでいくにはリーダーシップは必要不可欠です。そのためには「道を示す」こと、つまり
・ゴールを示し
・戦い方・進め方を明らかにし
・広い視野をもって将来を見据る
ということがまず必要です。
その上で
・実行力
・スピード
・柔軟な思考力
・変化対応力
をもって成果、つまり競争に勝つことが求められるのです。
では、そのために必要なリーダーの素養とは何でしょうか。この本では、
・先見性
・勇気
・現場力
をもった、諸葛孔明のような聡明さと、関羽やち張飛のような行動力・突破力が必要としています。同様のことは、野中郁次郎氏は「知的体育会系」「フロネティック・リーダー」といった表現をしています。激しい競争にさらされている現在、考え・動けるリーダーでなければ、もはや成果を得て、競争に勝つことは難しくなっているのです。