2012年3月19日月曜日

冷静なリスク対応には客観的な判断基準の準備を ⇒ 安易な変更は御法度、クールな対応が勝負の分かれ目

リスクマネジメントを考える上で重要なことがあります。それはリスクの判断基準。どのポイントが具体的な損失につながるリスクになるのか、それを明確にしておくことは不可欠です。

天秤 / iyoupapa


  客観的な判断基準は必要不可欠 ⇒ クールな判断が事態の悪化を防ぐ
リスクを判断するためには大きく2つの情報が必要です。一つは数値で表れる定量的な情報。代表例としては、原発事故以降目にするようになることが多くなった放射能関連の計測値があります。もう一つは数字では表しにくい定性的な情報です。リスクとして判断するに足りるシチュエーションを説明するものです。

こうした定量的、定性的な情報に対して判断基準を設けることが必要なのです。なぜなら、リスクが発生した(または発生しようとしている)状況では、大量の情報が流れ込み、多くの関係者が動くため混乱が避けられません。その場で考えながら判断することは限りなく不可能に近いからです。加えて、リスクに直面したときに人間の判断基準は正常な状態を保てないことがあります。問題のある現実を直視できず、ポジティブな状況のみを見ようとする心理が働き、正しい判断ができなくなってしまうのです。その結果、事態の悪化を招く可能性は否定できません。

混乱や心理的な不安定さからの判断ミスを防ぐためにも、事前に判断基準を客観的な視点から設定しておくことが必要なのです。そして、リスク発生時はどんなに求められる答えが厳しいものであったとしても、可能な限り冷静な判断迅速に行うことが求められます。もちろんこのとき、判断基準に応じた対応策を要しておくことも不可欠です。


  判断基準の変更は慎重に ⇒ リスクの渦中での変更は何も解決しない
実際にリスクに直面したとき、判断基準をもとに冷静に対応することはリスクマネジメントで最も必要なことであり、同時に最低限守らなければいけないラインでもあります。たとえ、判断基準を遥かに超える大きなリスクが発生してしまったとしても例外ではありません。少なくとも事態収束するまでは判断基準は維持し、事態収束につとめることが必要です。

逆に言えば、判断基準を安易に修正することは避けるべき対応、とも言えます。なぜなら、安易な判断基準の変更は理屈上リスクがないように見せかけるだけであり、何ら解決になっていないからです。

その最たる例が福島第一原発の事故で発生した放射線問題です。もともと世界的に見ても厳しい基準値であった、という話もありますが変更したことは事実。問題を過小評価させる方向にバイアスをかけただけなのではないでしょうか。判断基準が緩和されれば、ニュース性も下がり、メディアも取り上げにくくなります。いつしかその基準が変更されたという記憶も薄れ、変更後の基準が当たり前だと感じられるようになれば、市民から問題を指摘する声も減ります。しかし、放射能汚染が解決された訳ではないのです。混乱を防ぐために必要だった、という意見についても、基準値を変更する以外の方法を用意していなかったことを問題視すべきでしょう。


  まとめ:客観的な判断基準でクールな対応が勝負の分かれ目
冷静に客観視できる状態で、定量的な側面、定性的な側面双方から判断基準を設定することは必須です。その上で、リスクが発生した場合は判断基準を頼りに事態収束に努めることが必要不可欠なのです。

これはリスクという観点だけでなく、ものごとを評価判断するためには必要な考え方ではないでしょうか。例えば会社の人事評価、購入する商品の選定など、ビジネスでは必要となるシーンは少なくありません。このとき、その場であれこれと考えているようでは機を逸してしまいます。また、危機感にあおられるだけでなく、気持ちが舞い上がったときも判断が鈍ります。客観的に判断し、クールに行動するためにも判断基準の準備は必須なのです。