オライリージャパン
発売日:2011-08-20
以下、要点と解釈の整理です。
ゲームとは
ゲームは単なる遊びではありません。以下の5つの要素を持った、目的へと向かう一連の流れです。とくに何か新しいことを考える、プランニングをする、問題解決策を探るときに有効です。
・ゲーム空間 :
目的に向かって没頭するための場
・境界 :
ゲームと現実、アクティビティごとによる時系列、実際の場所ごとによる空間的な場の境目=場の切替ポイント
・ルール :
ゲームを進める上での前提、共通の原則=場の秩序
・道具 :
ゲームで利用する道具、ゲームに関する(ゲームに対して意味のある)情報を持つ物体
・ゴール :
ゲームが終了するための条件、ゲームの目的
ゲームと今までのプロセスの違い
従来のケーススタディやPDCAによるプロセスとゲームの違いを簡単に整理すると、以下のようになります。これは今までのプロセスによる手法が不要というわけでは決してなく、私たちはプロセスによる解決か、ゲームによる解決か、さらにはその両方による解決かを選ぶことが必要になっていることを意味します。
・プロセス ⇒ ゲームの違い
計画性 ⇒ 不確実性 :
プロセスでは、整理された計画が重要
ゲームでは不確実性の高い環境へ対応が必要
評価 ⇒ 信念・価値観 :
プロセスでは、評価指標の達成が目的となる
ゲームでは信念や価値観の実現が重視される
スキルワーク ⇒ ナレッジワーク :
プロセスでは、目標達成するためのスキルが必要
ゲームでは、クリエイティブに発展させることが必要
クローズド ⇒ オープン
プロセスでは、固定化されたチームが必要
ゲームでは、オープンな関係性が必要
ロジック ⇒ ストーリー
プロセスでは、明快な意味関係・連続性が必要
ゲームでは、周囲を引き込むストーリーが必要
一定期間ごとのフィードバック ⇒ 毎日のフィードバック
プロセスでは、安定して動くので一定期間ごとに改善
ゲームは、毎日変動するので日々改善
ゲームの世界での展開
ゲームによって新しい可能性を得るためには、そのためのステップを踏んでいかなければいけません。しかもそれは、ゲームをどうやるか、という“すでにやるべきゲームがある前提”から始めるのではなく、どのようなゲームが必要か、という”そもそもとして、やるべきゲームを決める”レベルから取り組むことが必要なのです。とくに不確実性の高いビジネスや社会問題に対してのイノベーションは、固定されたゲームでは到底間に合わないのです。
①世界の想像
ゲーム空間がどういったものになるのか、イメージを固めます。
このとき、ゴール(明確である必要はなくあいまいでもいい、もちろん明確でもいい)も設定しておきます。
RPGで言えば、
・勇者がいて魔王を倒す物語
・舞台は現代の都会
・主人公である勇者に与えられた不思議な力で戦う
といったコンセプトを固めます。
ビジネスの世界なら
・ビッグデータを自由に扱えるサービスを実現
(ビッグデータという魔物をサービスという勇者で倒す)
・日常的なビジネスの場で活用して貰う
(現代の都会を、ビジネスの場に置き換え)
・自社が積み上げてきたブランドとサービスの実績を武器に戦う
(主人公を自社に、不思議な力をブランドとサービスに置き換え)
といったかたちです。
②世界の構築
ゲームの世界の定義づけを行います。境界、ルール、道具を整理します。
このとき、ゲームの初期状態を明らかにしなければいけません。最初にアクセスできる場、制限されるルール、利用できる道具は限られるはずです。まずはその現実を受け止めなければいけません。
ただし、初期状態をゲーム中ずっと維持するわけでもありません。大きな旅であれば、途中でアクセスできる場も増え、ルールも変わり、利用できる道具も増えていくのです。RPGが進むにつれて行ける町が増え、カギを手に入れて開けられる扉が増え、使える武器や魔法が増えるように。
③世界の開幕
ゲームに関わる人たち=プレイヤー同士の同意を得て、ゲームが始まります。このとき、全てのプレイヤーはゲームの世界のイメージを共有し、境界・ルール・道具を理解していなければいけません。そして、まず目指す方向を決めることがhつ用なのです。
ここではあらゆることを試す、発散することが必要となります。ゴールに向けて何が期待でき、どんな可能性があるのかを出し尽くします。そうすることによって、探索できる世界が広がるからです。RPGで、町でいろいろな人の話をきいて、いろいろな情報を収集することで、行き先がわかってくる、という仕掛けそのものを行うのです。
④世界の探索
ゴールに向けて旅を始めます。ゲームの世界で、境界、ルール、道具を駆使してゴールの達成に向かって進みます。このとき、途中でゴールは変容することもありますが、それにも柔軟に対応しながら、ただひたすらにゴールを目指します。
ゴールへの道は一本道ではありません。あちらこちらに寄り道し、いろいろな場にアクセスし、発見して進んでいきます。その中でまったく気付いていなかった発見を得たり、ゴールを得るための特別な道具を得ることができるかもしれません。これはRPGで自由に世界を歩き回り、ダンジョンを探検するという仕掛けとまったく同じです。
⑤世界の閉幕
ゴールが実現されればゲームは終わります。RPGで言えば、魔王が勇者を倒してエンディング、というところです。このとき、ゴールだけが単純に成果ではありません。そこにたどり着くまでのプレイヤー間でのやりとり、関係性、探索によって得られた洞察が大きな価値を得るものとなります。
ゲームストーミングの要点
ゲームストーミングでは留意すべき要点があります。ただ単純にゲームをするのではなく、この要点を抑えることで効用をより多く得ることが可能になります。
・開幕したゲームは必ず閉幕すること
・開幕と閉幕は同時に行わないこと
・問いかけにより、最初にゲームに火をつける(プレイヤーにゲームに夢中にさせる)こと
・思考をたすける道具を用意する
・出てきた要素を繋ぐ結節点を作る
・空間を意味を持たせて整理する(チェスのマスのように)
・絵に表現する
・無作為・逆転・再構成によってアイディアを膨らませる(いろいろな見方をする)
・即興的な発想を大事にする
・出てきた要素から必要な要素を絞り込む
・新しいことへの挑戦を続ける(冗長化、単調化させない)
これらの要素を提供するスキルがゲームを進める上では求められるのです。
なかでも
・問いかけ
・道具の用意
・意味空間の定義
・絵での表現
・即興
ができることは特に重要なスキルとなります。