2012年5月16日水曜日

牛丼3社の決算発表そろい踏み ⇒ スクラップ&ビルドも値下げ戦略も頭打ち

デフレの象徴のように値下げ競争を繰り広げてきた外食産業。特にファーストフード業界。そのトレンドも大きく変わろうとしてます。

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  牛丼3社決算発表 ⇒ 吉野家の一人負け?
2012年3月期の決算発表により、吉野家ホールディングス、松屋フーズ、そしてすき屋のゼンショーの2011年度の収益状況が明らかになりました。決算上の数字を見ると吉野家だけが減収減益となっています。

○吉野家ホールディングス
 連結決算:
  売上高 165,883百万円 (前期比 3.2%減)
  経常利益 5,311百万円 (前期比 3.6%減)

 牛丼業態(国内):
  売上高 87,667百万円 (前期比 3.9%減)
  利益 4,551百万円 (前期比 2.5%増)     

○松屋フーズ
 連結決算:
  売上高 75,653百万円 (前期比 7.7%増)
  経常利益 4,874百万円 (前期比 3.6%増)

 牛丼業態(国内):
  売上高 71,417百万円 (前期比 8.6%増)
  利益 不明

○ゼンショー(すき屋)
 連結決算:
  売上高 402,962百万円 (前期比 8.7%増)
  経常利益 19,300百万円 (前期比 22.2%増)

 牛丼業態(国内):
  売上高 178,915百万円 (前期比 8.6%増)
  利益 16,600百万円 (前期比 3.0%増)

  松屋、ゼンショーも既存点売上げ厳しく ⇒ スクラップ&ビルド戦略の限界
財務上の数字を見ると、吉野家は減収減益ではありますが、松屋とゼンショーは増収増益。一見すると好調に推移しているように見えます。しかしながら、2012年4月期の既存店営業成績で見ると軒並み前年比割れ。2011年4月は震災直後の自粛ムードで消費低迷していた時期でもあり、その水準を割り込んでいるということは収益性がかなり下がっていることを意味します。

○吉野家ホールディングス
 売上高 前年同月比 8.3%減
 客数 前年同月比 7.4%減
 客単価 前年同月比 0.9%減

○松屋フーズ
 売上高 前年同月比 2.3%減
 客数 前年同月比 2.2%減
 客単価 前年同月比 0.1%減

○ゼンショー(すき屋)
 売上高 前年同月比 6.7%減
 客数 前年同月比 5.8%減
 客単価 前年同月比 1.0%減
決算ベースで収益が確保できている要因は、新規店舗をオープンした際の“オープン景気”によるもの。そして同時に不採算の店舗を閉店し、赤字の垂れ流しを防いでいるのです。いわゆるスクラップ&ビルドの戦略。しかしながら、既存店全体の収益が低下しており、スクラップ&ビルドの戦略だけでは収益性を維持できなくなってきているのです。


  収益性低下の要因は? ⇒ 消費者が値下げに“慣れて”しまったこと
既存店の収益性を維持する策として。牛丼各社はこれまで低価格キャンペーンを行ってきました。しかしながら、このキャンペーンで今後収益性を回復することは難しくなってきています。事実、吉野家は2012年4月4日~10日の間、牛丼を110円引きにしました。また、ゼンショーも同6日~16日まで魚うどん商品を一律30円引きにしています。しかしながら結果は前年比割れ。本来ならば客単価が下がる分、来客数が増えて売上増につながることが期待できたところ。結局、値下げ競争に参画しなかった松屋が売上減少の幅を一番小さくすることになりました。

このような結果になった背景には、
 ・消費者に対する値下げによるインパクトが薄れてきた
 ・4月24日にアメリカでBSE感染牛が見つかり、客離れにつながった
といったことが考えられます。しかしながら、後者については4月終盤のニュースでもあるため、収益へのインパクトは限定的でしょう。したがって、今回の収益源の要因は前者、平たく言ってしまえば、値下げに消費者が慣れてしまったことにあります。慣れてしまったためにキャンペーンもありがたさも薄れ、無理に店舗に足を運ぶこともなくなります。結果、来客数は伸び悩み、しかも値下げキャンペーンを行っている分客単価が落ちるわけですから、売上低下は必然的に発生するわけです。