2012年5月21日月曜日

FacebookがIPO、時価総額はやっぱり1000億円 ⇒ 今後はO2O分野に投資か?


2012年5月18日、話題になっていたFacebookのIPOがついに現実のものになりました。史上最大の資金調達になるといわれていたFacebookのIPO。実際のところ、どうだったのでしょうか。

Mark Zuckerberg - Caricature / DonkeyHotey


  ゆるやかな取引スタート ⇒ それでも史上最大のIPOは揺るがず
5月18日、ナスダック市場に公開されたFacebookの株価は1株38ドルでスタート。その後、43.2ドルまで上昇しましたが、結局初日には38.23ドルで終わりました。期待されていたわりには上昇率は0.6%。IPO時の株価急進による“オープン景気”のようなものは見られませんでした。

しかし、それでも売りに出された株は4億2120万株。単純計算でも1株38ドルなので、160億ドル(約1兆2800億円、1ドル=80円計算)もの資金調達が可能になっているわけです。
市場予測が50億ドル~100億ドルといわれていたので、それを上回る数字となっています。また、時価総額については市場予測の通り1000億円。文句なしにインターネット企業として史上最大のIPOとなりました。


  株価上昇はこれから? ⇒ 欧州危機の行方次第
Facebookの株価が伸び悩んだ要因は複合的な様子。まず、初日の取引開始時国が30分送れてスタートからつまずき、その後トレーダー間の売買情報の交換に支障が出るという、証券市場での物理的なトラブルが発生していました。とはいえこれは些細な問題。

やはり、大きな値上がりにつながらなかったのは欧州危機の再燃による市場全体の冷え込みが影響しているのでしょう。欧州危機が発展し、ギリシャがユーロから離脱、債務不履行といった状態になれば、財政不安を抱えているイタリアやスペインに経済危機は飛び火。欧州経済が大混乱になります。そうなれば、グローバルでつながっている金融市場全体に影響が波及します。その影響を回避するために、売りが先行して世界的に株価が2012年5月に入ってから低下傾向。Facebookが上場しているナスダックも例外ではなく、結果、思ったほど株価を伸ばさずに終わったとも考えられます。

Facebookの株価が上昇するのは、欧州危機がひと段落してからなのかもしれません。逆にもし、欧州危機の解決が見通せるようになる前に株価が大幅に上昇するようなことがあれば、それはFacebookに対する大きな市場の期待の現われ、と捉えてよいのでしょう。


  今後のFacebookの動きは? ⇒ O2O分野への投資拡大か
IPOによって資金調達をしたFacebookは今後どのような動きをとっていくのでしょうか。IPOの翌日、2012年5月19日には早速ソーシャル・ギフトサービスのKarmaを買収したことを明らかにしています。このKarmaはデジタルなギフト(クーポンやカードなど)ではなく、物理的な商品を販売して贈り物にできるサービスとなっています。

IPO申請時の上場目論見書では、スマートフォンなどのモバイルユーザ増大が収益に悪影響を与える可能性を示唆しています。以前から指摘されているように、Facebookはモバイル分野でのマネタイズが弱く、その収益化が課題になっています。この対応策の一つとして、Facebookクーポンのサービスなどをスタートしています。

こうしたアクションに共通することは、デジタルの世界に閉じたビジネスではなくなっていること。Facebookの収益源は基本的には広告収益。しかしながら、すでにインターネットユーザはWeb広告に慣れすぎてしまっており、Webだけの戦略では十分とはいえなくなってきています。特にモバイルユーザが増えているということは、PCに比べて小さな画面で操作するため、広告スペースが限られてきます。となると、収益獲得のチャンスが減ってしまうわけですから、新しい策が必要となる。そこで考えられるのが、デジタルの世界とリアルの世界を結ぶO2O(Online to Offline)です。

特定のメッセージをFacebookのタイムライン上に表示し、そのメッセージをトリガーにクーポンを発行、さらに店舗までのナビゲーションをFacebookアプリで提供し、店舗での決算もFacebookペイメントサービスで行えるようにする。このようなシナリオを描くことができれば、Facebookは収益性を大きく高める可能性があります。すでにタイムライン上での強調表示の実験はスタートしていますし、前述の通りクーポンサービスも開始されています。今後、資金調達をしたFacebookがO2O分野でどのように動くのか、注目です。