2012年5月30日水曜日

Microsoftもソーシャルへ、検索をシェアするSNS「So.CL」サービススタート ⇒ 課題はコンテンツとマネタイズ


GoogleやApple、Facebookの話題に押されて、Windows8以外あまり話題が見られないMicrosoft。しかしそこは巨人企業。次なる一手も動き出していました。しかも、ソーシャルの分野で。


  MicrosoftのSNS「So.CL」 ⇒ 検索をシェアするSNS
MicrosoftがSNSサービス「So.Cl」を公開しました。このサービスの特徴は、ウェブ検索を共有する、というもの。興味のあるトピックを検索結果という形で共有できるようになっています。主なターゲットを学生で、今のところ英語のみのの提供となっています。

基本的には自分の興味のあるキーワードを検索し、それにコメントをつけてポストをすると、So.Cl上でシェアされるというもの。シェアされた内容は、自分をフォローしている他のユーザーや、同じキーワードに関心のあるユーザが確認できます。同じトピックに興味関心のあるユーザ同士で情報交換をするきっかけになります。

またExploreの画面を開くと、WindowsPhoneのようなユーザ・インタフェースが表示されます。トピックをカテゴリごとに着られており、それぞれクリックすると関連するポストを一括して確認することができます。


  Microsoftのポテンシャル ⇒ 最大級のHotmailユーザー
さて、このSo.ClはSNSとして成功していくのでしょうか。ここで注目なのが、ログイン方法です。ログイン方法としては
 ・Facebook ID
 ・Windows Live ID
の2種類が利用可能になっています。

まず、Facebookについては2012年5月時点で世界9億人ユーザー(Facebook発表)。このFacebookユーザが利用してくれる可能性があります。とはいってもFacebookはOpen Graph APIを提供し、FacebookのIDを使って他サイトのサービスが利用できる仕組みを提供しています。So.Clだけが特別というわけではないので、FacebookのIDについてはユーザを最低限確保するための施策と位置づけられるでしょう。

むしろ、もうひとつのログイン方法であるWindows Live IDがポイントです。Windows Live IDはMicrosoftが提供するWebサービスのID。1994年からサービスを行っているWebメール「Hotmail」のアカウントにもなっており、2010年時点でアメリカ国内だけでも4億8500万ユーザ(Compete調べ 2010年)がいます。Windows Azule、Sky Driveといったクラウドサービスのアカウントにもなっていますので、全世界でみればさらに多くのユーザを抱えていることになります。加えて、iOSやAndroidが登場してきているとはいえ、WindowsのOSとしてのシェアは圧倒的。このWindowsが使われている環境を使い、Windows Liveへ誘導、さらにはSo.Clに結び付けていければ“数字上“は相当数のユーザを確保できるかもしれません。Facebookとまではいかないにしても、億単位のユーザを集めてGoogle+を越えるぐらいのポテンシャルはあるといえるでしょう。


  数字だけで語れないSNS ⇒ 課題はコンテンツとマネタイズ
しかしながら、登録ユーザ数を増やすだけではSNSとしての価値は上がりません。いかにSNS上でユーザがアクティブに情報を発信して交流していくか、がキーポイントになります。その観点で考えたとき、検索キーワードと結果をシェアできる、というだけのコンセプトでは面白みにかけます。FacebookやGoogle+といったSNSとの差別化要素としても不十分でしょう。なぜなら、単一の昨日の話にとどまっており、検索キーワードと結果をシェアできることでユーザはどのような楽しみを得られるのか、といった点がクリアになっていないからです。いわゆるユーザ・エクスペリエンスです。

一つの可能性としては、セマンティックWebを補完するアプローチがあると思い白いかもしれません。セマンティックWebはユーザが必要な情報をシステムが考え、提供してくれる仕組み。GoogleのKnowledge Graphなどでサービス提供されています。しかしながら、セマンティックWebはWeb上に存在する情報を提案するだけであり、新しい発想の提供・知識創造を提供するものではありません。しかしながら、こうした検索キーワードで興味関心が同じ人がつながることで、知識創造のきっかけを作ることができるかもしれません。セマンティックWebを機能補完し新しい発見からアクションにつながる場、として位置づけることには価値がありそうです。ただし、これもFacebookやGoogle+でもできること。Microsftの既存コンテンツを結びつけて、更なる差別化要素が必要なことは言うまでもありません。

また、マネタイズも大きな課題になるでしょう。このSo.Clはいまのところマネタイズの方向性は見えていません。おそらく広告収益は確保していくのでしょうが、従来型のWeb広告以上のものが見当たらないのが実情です。Microsoftの収益源はソフトウェア提供/クラウドサービス提供であるため、できればそこに紐付けていきたいところ。例えば、So.Clで結びついたグループに対し、ビジネススタートアップを支援するプログラムを用意してソフトウェア利用・クラウドサービス利用の機会を増やしていく、といった仕掛けが欲しいところです。


関連URL)
 So.Cl