スマートフォンが普及することで注目を集めるBYOD。しかし、そのデメリットを解決しないことには実現は困難です。ではどうやってBYODのデメリットを解決していけばよいのでしょうか
①クラウド化
②認証強化
③デバイス利用ルール
④業務環境見直し
⑤リテラシー教育
といったものが必要となります。
①クラウド化 ⇒ システム管理の負担軽減へ
まず、クラウド化。多様なスマートフォンやタブレットが影響しない形でブラウザベースで動くクラウドサービス/Webアプリケーションでサービスを提供すれば、システム改修の問題を解決できます。また、業務データをクラウドサーバー上で管理し、スマートフォンやタブレットのローカル環境に残さないようにすることで、情報漏えいのリスクも軽減できます。
②認証強化 ⇒ よりセキュアな業務環境を、どこでも
次に認証強化。従来型のID/パスワードの認証だけでなく、複合的に認証サービスを組み合わせることが必要になります。例えば生態認証。顔をスマートフォンやタブレットのカメラで認識し、クラウド上で顔認証をとってサービス利用を許可することで、セキュリティをより高く保てます。他にもNFCなどのICカードを使った認証やロケーション・ベースでの認証などを組み合わせることで、どこにいてもセキュアなユーザ環境を実現することが可能になってきます。
③デバイス利用ルール ⇒ シンプルで核をついたBYOD管理
個人のスマートフォンやタブレットなどのデバイスを利用するためのルールの整理も必要です。完全にクラウドベースで利用するのであっても、デバイス上でコピー&ペーストなどを行えば情報を抜き出すこともできます。また、デバイス自体がウィルス感染していれば、サーバ自体に感染のリスクが広まることも考えられます。そこでデバイスを利用するためのシンプルで、かつ核をついたルールを定義すればよいのです。例えば、専用のブラウザやアプリでしか利用できない、デバイス内にもうひとつOSをいれてシステム的な環境を分ける、といった環境を用意しておくのも一つの手法になります。
④業務環境の見直し ⇒ BYODをきっかけに“働き方”の見直しを
そして業務環境の見直し。おそらくはここが一番の課題になるポイントでしょう。BYODはITの利用環境が変わるだけでなく、業務の取り組み方、仕事の仕方がかわります。この変化に制約をかけようとすれば、業務生産性の改善で他社に遅れをとり、競争力を失っていく可能性すらあります。とくに、仕事とプライベートの時間があいまいになれば、残業の管理をどうするか、という議論は必ず起きます。
これは時間給で管理される仕事であれば当然おこる議論です。しかしながら、それが該当するのはマニュアルワーカーまで。スキルワーカーであれば、アウトプットにコミットする形で報酬が支払われるべきです。ナレッジワーカーであれば、自ら価値を作り出すことで報酬を得ることになるでしょう。そして現在必要とされているのはスキルワーカーやナレッジワーカー。となれば、時間をベースにした給料体系ではなく、アウトプットをベースとした給料体系が必要となってきます。つまり、そもそも論として時間給を前提とした仕事の仕方を見直すことが必要なのかもしれないのです。
もちろん、アウトプットベースにしたことで仕事ばかりにとらわれてしまってもいけません。自らの仕事をどうやってマネジメントするか、というところも過大になってくるでしょう。
これらはあくまでも一側面に過ぎませんが、このBYODをきっかけに“働き方”というものを見直すことは必然なのだといえます。
⑤リテラシー教育 ⇒ ユーザの自己管理能力は必須命題
最後にリテラシー教育。BYODを導入するということは、利用する社員一人ひとりが自分のデバイスを管理することが必要になります。統一した基準でそろえているわけではないので、情報システム部門がすべてを一括して管理することもできませんし、サポートも十分に行えなくなってしまいます。自分のデバイスでトラブルがあった場合は、ユーザが自分自身で処理できるようにしなければいけないのです。
また、いつでもどこでも業務データにアクセスでき、業務システムを利用できる環境があり、かつそのすぐ横にはFacebookなどのSNSにつながるアプリがあるわけです。情報の扱い方、発信の仕方、仕事とプライベートの切り分け方といった、ユーザの“センス”に関わる部分の教育は必須要件となります。しかもそれを、周りの監視が無い状態で、ユーザが自己管理できるようにしていかなければいけないのです。
まとめ:システム的な課題解決は簡単、問題は人
結局のところ、システム的な問題解決はすでにあるテクノロジーを導入することで解決することが出来ます。しかしながら、業務環境の見直しやリテラシー教育は一筋縄には行かないでしょう。なぜなら、人が絡むため、箱モノを用意するだけで解決できる問題ではなくなるからです。BYODを導入してどう業務を変えるのか、ユーザはどう変わるべきなのか、それをどうやって実現していくのか。こういった観点を深堀りすることがBYODによる業務生産性向上の要になるのでしょう。