2012年5月23日水曜日

Googleが「Knowledge Graph」でセマンティックWebをサービス化 ⇒ ビッグデータ時代のICTトレンド大変革へ

次世代Webとして名前が挙がることの多いセマンティックWeb。ビッグデータを扱う上でとても重要な技術。その技術がGoogleによって身近なものになりました。

Kate Ray's documentary "The Semantic Web" (Wordled by Jim Stauffer) / Chris P Jobling

  Googleが「Knowledge Graph」をリリース ⇒ セマンティックで検索対象は知識に
Googleは2012年5月16日、検索機能のアップデートを発表しました。この発表でリリースされた機能はセマンティックWeb技術を利用した「Knowledge Graph」。何ができるかというと、
 ・Web上の情報を紐付け
 ・ユーザが検索時に求める“意味”を推測
 ・検索キーワードに関連する情報を提案
といったことができます。現在は英語サイトでのみサービスをリリースしています。実はGoogleは長年この技術を研究しており、検索エンジンの仕組みには以前から取り入れられていました。それがいよいよサービスという形で私たちの目の前に現れているわけです。

一見、今までの検索サービスと同じように見えるかもしれません。しかし、これはユーザ一人ひとりに対して必要な情報をシステムが考え、提案してくれるわけです。今までの検索エンジンの特徴と比較するとその違いはよく見えてきます。

 今までは。。。
 ・Webページに含まれるテキスト情報をキーに
 ・検索キーワードを含んでいるWebページを
 ・文字列によるリスト形式で表示

 Knowledge Graphでは。。。
 ・Webページに含まれるコンテンツの意味を解析し、
 ・検索キーワードの意味も解析し、
 ・意味が合致する情報をビジュアル的に表示

つまり、検索対象や検索キーはテキスト情報から意味情報に代わり、その結果は文字ではなく“よりユーザが直感的に理解できる”ビジュアルで表現されるわけです。


  Knowledge Graphの利用イメージは? ⇒ 検索キーワードがわからなくても見つかるサービスに
実際には英語サイトで検索すると、意味が取れるキーワードの場合は画面右側にパネルで候補が表示されます。例えば「Earth」で検索すると、地球そのもの、映画のEarth、ミュージックバンドのEarthが候補として表示されます。

次に、映画のEarthをクリックすると、検索結果が切り替わります。画面の中央は自動的に設定された検索キーワードによって抽出されたWebページの候補がリスト表示されます。

そして右側には映画 Earth に関連する情報のサマリーと、関連情報がビジュアルで現れるわけです。ここで関連情報からOceansをクリックすると、再び検索結果が切り替わり、今度は「Ocean」による検索結果が表示されます。

このユーザ・エクスペリエンスには、今までと大きな違いがあります。もし、ユーザがOceansの映画のDVDを買いたかったして、そのときに映画のタイトル名を思い出せない場合を想定して比較してみましょう。ただし、Earthという映画のような内容だった、ということはわかっているとします。

今までは。。。
・Earthに加えて、複数のキーワードを並べて検索
・たくさんの検索候補からめぼしいWebページを開く
・Webページの内容から「Ocean」のタイトルを発見
・「Ocean」を検索して内容を確認
・自分の欲しい情報が「Ocean」だとわかる
・OceanをECサイトで発注

Knowledge Graphでは。。。
・とりあえずEarthで検索
・関連情報でOceansが表示、内容確認
・OceansをECサイトで発注

このように大はばに検索が楽になるわけです。


  ビッグデータ時代の検索サービス ⇒ ICTトレンドの変革はここから始まる
Googleがリリースした「Knowledge Graph」、そこで利用されているセマンティックWeb。この技術はまさにビッグデータ時代に必要な技術。なぜなら、従来型の検索エンジンの仕組みでは、かつてない速さ・量・多様性・複雑性を持つインターネット上の情報を取り扱うには限界が来ているからです。具体的には、
・適切な検索キーワードが見つけにくい
・検索結果が多すぎるため、情報のチェックが面倒
・絞り込みすぎると、欲しい情報にたどり着けない
といった状態にあるからです。検索作業のために、不必要な労力を払っているわけです。イメージしやすいのはSNSでしょう。SNSの投稿の中から、欲しい情報を引き出すことはかなり手間です。しかしながら、このSNSが現在情報発信源として中心的なポジションに位置しているのです。

そこで活躍するのがセマンティックWeb。一つのキーワードから意味を紐付け、ユーザが必要としている情報を提案してくれるわけです。ビッグデータの環境での煩雑な検索作業から解放してくれるのです。

このセマンティックWebの利用について、Googleの「Knowledge Graph」は始まりに過ぎません。なぜなら、これらはWebサービスを構築するためのベースだからです。そしてGoogleだけでなく、
・FacebookのOpen Graph
・Twitterのバックグラウンド
・IBMの人工知能Watoson
などにもセマンティックWebのエンジンは採用されています。今後、セマンティックWebの技術を利用したWebアプリ、スマートフォンアプリは急増することは間違いないでしょう。

企業内の情報を対称にすることで、エンタープライズ系のシステムにも大きな変革をもたらす可能性があります。ビッグデータ・アナリティクス市場を新しいステージに引き上げる要素としてもその存在を理解しておくことも必要です。また、O2Oの観点から言えば、モバイルと組みあわせて“今だけ・ここだけ・あなただけ”のユビキタスなサービスを提供するエンジンにもなります。セマンティックWebの実用化は、ICTのトレンドに大きな変革をもたらすことは間違いありません。