任天堂が決算発表 ⇒ 上場以来初、432億円の最終赤字
2012年4月26日、任天堂は2012年3月期の決算発表を行いました。その内容はというと、連結で売上高は前年比36%減の6476億円、最終損益は432億円の赤字。任天堂の赤字は上場した1962年以来始めて。2012年は3DSの販売回復や次世代機であるWii Uを投入することで業績回復を狙っており、2013年3月期の連結業績予想は売上高で8200億円、最終損益は200億円を見込んでいます。
1つ目の理由:ハード販売の不調 ⇒ ソフト売上げもあわせて減少に
任天堂が収益を縮小してしまった要因は大きく3つあります。1つはハード販売の不調。Wiiの販売台数は前年比35%減の984万台、3DSは予想を15%下回る1353万台にとどまりました。
任天堂の場合、ハードが売れることは収益の根幹。それは単に販売台数が売上げに跳ね返ってくるだけでなく、ハードが売れればその分ソフトも売れることになるからです。となれば、もちろん自社ソフトの売上げが増えます。さらに他社が任天堂のハードにむけてソフトを提供する機会が増えます。任天堂は他社がソフト提供する際にロイヤリティを取っているので、他者のソフト提供量が増えて売上げが上がれば、その分ロイヤリティ収入も増えるわけです。今回はハード自体の売上げが低迷し、ソフトの売れ行きがかんばしくなかったことから業績に影響したと考えられます。
2つ目の理由:優良ソフトの不足 ⇒ ハード売上げの促進できず
ハードの販売台数がソフトの売上げに影響するように、ソフトの売上げもハードに影響します。なぜなら、ドラゴンクエストシリーズやファイナルファンタジーシリーズといった“出せば当たる”優良ソフトに恵まれなかったともとれます。ビッグタイトルが出れば“遊んでみたい”と思おうユーザが増え、ハードの販売数が増えるという流れも起きるからです。2011年はこうした優良ソフトにWiiや3DSが恵まれず、ハード販売を促進する材料が乏しい状態となったことも収益悪化につながったと考えられます。
3つ目の理由:円高の影響 ⇒ 海外での収益が目減り
任天堂が赤字となった要因の3つ目としては、円高の影響は無視できません。任天堂は事業活動を日本だけにとどめているわけではなく、海外にもハード・ソフトを展開しています。したがって売上高は海外でも計上されることになります。当然、海外で計上した売上げには為替が影響します。例えば200ドルの売上げは1ドル100円のときなら2万円の売上げになりますが、1ドル80円なら1万6千円の売上げになってしまいます。2011年に急速に進んだ円高の影響が如実に現れているといえるでしょう。
まとめ:表面的な問題解決は更なる業績悪化の可能性に
任天堂の2012年3月期決算は、ハード・ソフトの不振、そして円高の影響を受けたものといえるでしょう。このとき、円高についてはグローバル展開をする企業として為替リスクを考えた戦略をとっていくことで今後回復していくことができます。問題はハード・ソフトの不振です。ハードが売れなかった理由、優良ソフトが出てこない理由、そしてハードとソフトの間で起きるはずの相乗効果が出てこない理由を深堀りすることが必要です。表面的な問題だけをみて、ハード開発やビッグタイトル投入を続けるのであれば2013年3月期も赤字になる可能性は否めないでしょう。“表面的な問題ではなく、根幹の問題に触れる”ことは、任天堂に限らず、どのような企業にも必要な当たり前のことではありますが。
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