2012年5月12日土曜日

大きな変化を迎えるゲーム業界⑪ ⇒ コンプガチャ規制をトリガーに構造変革が迫るソーシャルゲーム


ソーシャル・ゲームが抱える不健全なコミュニケーションと搾取型の課金システムの問題。この問題を解決するための調整が動き出しています。

くーさん

  各社による自主規制 ⇒ ソーシャルゲームプラットフォーム連絡協議会の発足へ
ソーシャル・ゲームの問題が指摘されるようになり、プラットフォームを提供するSNS事業者はそれぞれ自主的に規制基準を設けました。しかしその基準は各社ばらばら。個別の企業というよりは、業界全体の健全化・イメージ改善が必要な状態であるため、足並みを揃えること必要となります。そこでソーシャル・ゲームのプラットフォーム提供者となる以下6社はソーシャルゲームプラットフォーム連絡協議会を発足させました。
 ・NHK Japan
 ・Gree
 ・サイバーエージェント
 ・DeNA
 ・ドワンゴ
 ・Mixi

なお、2012年4月23日に発表された方針では、ユーザの利用環境改善に向けてて取り組みを行うことになっています。
 ・リアルマネートレード(RMT)対策の強化
 ・18歳未満の青少年ユーザーの適正利用のための環境整備
 ・ソーシャルゲーム内における分かりやすい表示
 ・ユーザーによる適正利用の促進と利用環境の維持・向上を推進するワーキンググループの設置
 ・関係各機関との連携


  行政も動き出す ⇒ 稼ぎ頭のコンプガチャ廃止へ、返金の可能性も?
ソーシャル・ゲームの事業者による自主規制の動きが出てきているものの、搾取型の課金システムは現実問題として発生しています。気がついたら10万円を越えるような高額請求を受けてしまうケースも存在しています。この状況を重く見た消費者庁は、ソーシャル・ゲームに対してガイドラインを発表する方針を2012年5月9日に示しています。

新しいガイドラインが適用されると、ソーシャル・ゲームの稼ぎ頭の課金システムである“コンプガチャ”が規制されることになります。“コンプガチャ”はソーシャル・ゲーム中でアイテムを獲得するガチャ(くじ引きのようなもの、ガチャガチャのイメージ)で、特定のアイテムを集めるとさらにレアなアイテムがもらえるという仕組み。ギャンブル性を高め、パチンコのようにユーザが過剰にのめりこむ要素をもっていると判断されています。要は、このコンプガチャが搾取型課金システムの象徴であり、それを規制することによって健全化を行政サイドからも促す、といったところが狙いとしてあるわけです。

消費者庁の動きをうけて、ソーシャルゲームプラットフォーム連絡協議会は2012年5月31日でコンプガチャのサービスを終了、以降も新たにコンプガチャのサービスを提供しないことを発表しました。また、ソーシャルゲーム開発事業者のKlabも自主的にコンプガチャの提供を中止することを発表しています。

しかし、問題はこれだけでは収まらないかもしれません。コンプガチャの違法性が示された場合、コンプガチャで課金した金額をユーザに返金しなければいけない可能性があるのです。そうなれば大きく事業者側は収益を減らすことになります。単に課金モデルが一つ減るだけではなく、ビジネスの基盤を揺るがすほどのインパクトに発展する可能性もあるのです。事実、すでにコンプガチャが規制される、という報道を受けてマーケットも敏感に反応しました。GreeやDeNAの株価は1日で約20%も値下がりしています。これはコンプガチャが無くなったことに起因して収益性が低下し、業績が悪化する可能性があるとマーケットが判断した結果です。


  コンプガチャだけではない問題 ⇒ サステナブルな経済モデルを
コンプガチャの規制についての問題が数多く取り上げられていますが、ソーシャルゲームをめぐる問題はコンプガチャだけではありません。多種多様な課金形態が存在し、コンプガチャという形態以外でもユーザの射幸性をあおる仕組みは存在します。未成年のトラブルの温床になっていることも変わりません。連絡協議会で示された5つの方針についても、あくまでも大きな方向性を示しているだけであり、明確な解がでているわけでもないのです。

ソーシャルゲーム自体が持続的な発展を続けるためには、局所的な利益を求めるモデルから脱却する必要があります。ソーシャルバブルにのって収益を確保しようという単純な考え方だけでは持続的な発展には結びつきません。もちろん、収益の獲得は事業として必須であることも町がありません。必要なことは、社会的な価値を考えたサステナブルな経済モデルの構築なのではないでしょうか。