センサー技術はなにも実験段階のものだけではありません。前述の通り、自動車運転の分野では衝突防止の技術として利用されています。また、これまでも自動ドアやセンサーライト、テレビのリモコン、WiiやXbox(Kinect)のコントローラーなどといった形で、身近なところでセンサーは利用されています。iPhoneのSiriなどの音声認識もそのひとつ。ただ、確実にその利用分野は広がっており、利用形態も進化しているのです。
三菱電機は声で動かすエレベーター ⇒ ハンズフリーで建物内移動を支援
三菱電機はカーナビに利用されている音声認識や、感知センサーを利用した、ハンズフリーで操作できるエレベーターを2012年夏より展開します。このエレベーターは30センチのところまで近づくと自動的に呼び出してくれ、さらに声で行き先階を指定できるというもの。誤操作を防止するために、音声操作を行う場合は「音声操作」「声で」「はじめ」のいずれかのキーワードをいってから行き先階を指定します。
このエレベーター、どういったところで役に立つかというと、やはり一番にイメージできるのは病院や介護施設。松葉杖や車椅子などで移動する方や目の不自由な方にとって、エレベーターのボタン操作は簡単ではないケースがありえます。また、看護師や介護士にとっても大きな荷物を運んでいたり、患者や要介護者をケアしながらエレベーターを利用するわけですから、ハンズフリーで利用できることにはメリットがあります。
ハンズフリー、という点に注目すれば、デパートや量販店、ホテル、駅ビルのエレベーターでの採用可能性も高いでしょう。なぜなら利用客が大きな荷物を抱えてエレベーターを利用するケースが多いからです。エレベーターガール/ボーイ、ドアマンなどを部分的に代替するシステムとして利用できるのです。また、利用客だけでなく荷物の搬入や移動のために店員が利用するケースも十分に考えられます。物流倉庫でも活用できるかもしれません。
排泄感知するセンサー ⇒ 介護サービスの品質向上へ
秋田テクノデザインは高齢者や要介護者の排泄を感知して、PCやスマートフォンに通知するセンサーシステム「おしりカイテキⅡ」を開発しました。2012年内には販売を開始する予定。仕組みとしては、
・おむつや尿とりパッドにつける使い捨てフィルム型センサー
・センサー情報を送受信する制御ユニット
・PC、スマートフォン、携帯電話にアラームと文字情報で通知
といったもの。
この仕組みにより、看護師や介護士が離れた場所いにいても状況を把握でき、ケアの抜けもれを防ぐことができるようになります。逆説的に捉えれば、看護師や介護士が特定のエリアに張り付いている必要がないため、業務上の負担を軽減することにもつながります。
また、排泄のタイミングをデータ収集できるため、患者や要介護者の健康管理にも利用できる、というメリットもあります。蓄積されたデータを分析すれば排泄のタイミングを予測することもできるため、トイレへの誘導など事前ケアも行うことができます。
この仕組み、現段階では介護施設での利用が前提となっていますが、小型化と導入コストが下がれば在宅介護でも利用できる可能性があります。在宅介護で利用できれば、介護を行う家族の負担を軽減することもできます。また訪問介護や、地域内で共助型介護を行っている場合にも有効でしょう。要介護者が必要としているタイミングで、必要な介護を提供する仕組みに変えていくことが可能となります。
もちろん、排泄感知のセンサーですので育児にも応用することが期待できます。小さな赤ちゃんを育てるお父さん、お母さんの育児負担の軽減にも役立つかもしれません。
利用用途を広げるセンサー技術 ⇒ ユーザエクスペリエンスのデザインもキーポイント
センサー技術の利用用途は広がり、より便利なサービスが実現されていくことは間違いありません。しかしながら、センサーで取得した情報を伝えるだけであったり、単に機会音声で祖処理するだけだと無機質になってしまいます。無機質で機械的な仕組みだと、デジタルに対してアレルギーのあるユーザは利用しなくなります。
そこでこういったセンサー技術にキャラクターをプラスして会話形式で利用できるようにする、ということも必要かもしれません。NTT西日本が2012年5月から開始したバーチャル・コンシェルジェの西野ひかりのようなイメージも一つのサンプルになるでしょう。
よりナチュラルに、人間的に、しかしその裏では高度なテクノロジーが活かされている、そのような“見えないIT”によるユーザエクスペリエンスのデザインが今後実用段階・普及段階では必要になってくるでしょう。
よりナチュラルに、人間的に、しかしその裏では高度なテクノロジーが活かされている、そのような“見えないIT”によるユーザエクスペリエンスのデザインが今後実用段階・普及段階では必要になってくるでしょう。