2012年4月21日土曜日

ネットスーパーで社会問題の解決へ ⇒ 鍵は地域共助型のソーシャル・システム



ネットスーパーは物流面だけでなく、デジタルの側面でも課題を抱えています。物流の課題をふまえたうえで、デジタルの課題を整理してみます。

/ HIRAOKA,Yasunobu



  インターネットを教えるのでは不十分 ⇒ できるかどうかは本人頼り
デジタルの側面での課題、つまり“インターネットを利用できない”という問題にはどのようにアプローチすべきでしょうか。インターネットを利用できるように教育する、ということは一つのアプローチでしょう。しかしながら、そのアプローチは必要性を感じており、“学ぼう”という意思がある人に対して有効です。そしてその意思を得るために、インターネットの必要性を訴える、というこうアプローチをすることも考えられます。しかし、おそらくこのアプローチでは解決に結びつかないでしょう。なぜなら、必要性をどんなに訴えられても、実感するかどうかは本人次第。まして、習慣的に利用する状況を作るとなれば、ハードルは相当に高いといえます。


  ナチュラル・ユーザ・インタフェースの可能性 ⇒ 今日の問題解決にはならない
では、どうやって対応するか。ひとつはインターネットを利用していることを意識させないほどにナチュラルなユーザインタフェースをもつデバイスを提供すること。Siriのように話しかけるだけで利用できるインタフェースが必要になります。しかも、ユーザがインターネットを利用している、デバイスを操作していることを意識しないで済むぐらい、生活にナチュラルに溶け込んでいる必要があります。しかしながら、音声認識にはまだまだ課題があるなど、研究段階の要素も少なくありません。将来的には実現可能でも、今日の問題解決策とは言えません


  人が介入することで支援 ⇒ 御用聞きが大きな価値に
そこで、あえて人が介入する、ということが解決策になると考えています。インターネットを利用できない人の話を聴いて、代わりにインターネットを操作して必要な処理をする人を置くのです。ただし、これはコールセンターを設置する、というアプローチではありません。実際に困っている人のところにいって、話を聴き、サポートをするのです。コールセンターは事務的になってしまいがちですし、何より最近のコールセンターは自動案内サービスで対応しているケースが少なくありません。この自動案内自体も“インターネットを利用できない”人たちにとっては障壁になりかねません。しかしながら、実際に出向いて話を聴くようになれば、機械的な要素は見えませんし、世間話もするので関係性を作り上げていくこともできます。サービスも手厚く提供できるようになるでしょう。昔の御用聞きのイメージです。

ただし、御用聞きを行う場合、人的リソースの負担がかかります。その解決策としては、先述の利用客・配送のとりまとめを行う、ということに加えて、地域での共助=助け合いができる環境を作ることが必要になります。共助を行う環境があれば、利用客である地域住民同士のサポートになるため、事業者側での人的リソースの負担は下がります。加えて地域での交流も生み出すことができるため、コミュニティ形成といった側面でも役に立ちます。結果的に、防災や介護といった問題の解決にもつなげていくこともできます。

  まとめ:ネットスーパーの活用には地域共助型のソーシャル・システムが必要
ネットスーパーは高齢者、障害者などの社会的弱者の生活を支援する仕組みであり、社会問題を解決するカードの一つになりえます。しかし、そのためには物流やデジタルの課題を解決していく必要があります。これらの課題は一つの事業者の努力だけで解決することはできません。事業者間の連携だけでなく、利用客との連携が必要になります。そして利用客である地域住民同士の助け合い、すなわち共助が行われる環境が必要になるのです。事業者同士、事業者と利用客、そして利用客同士のサポートが機能する、ソーシャル・システムの構築がネットスーパーの社会活用には必要なのではないでしょか。