日本経済新聞社
発売日:2002-06
以下、要点と解釈です。
資本主義から知識主義社会へ
2002年当時はちょうどIT革命真っ盛りの時期。当時は情報を電子化し、自動化することで業務を効率化することがメインテーマとなっていました。しかし、それはあくまでも手段。本質的には効率化された情報管理の仕組みの上で、人間が知識を生み出し、イノベーションを起こしていくことが求められるのです。情報を管理するという煩雑な単純作業をITで補完して人間の負担を軽減する、そして余裕ができた分をイノベーションに向けることが求められているのです。なぜなら、イノベーションが生み出す価値が競争力となるからです。ゆえに単にモノを作るプロダクトアウト型のビジネスは限界を向かえ、ソリューション型=モノをつかって何を実現するか、という点にフォーカスしたビジネスが必要になるのです。
SECIモデルによって創造される知識
データと情報と知識はに多様なニュアンスで使われていますが、それぞれに定義が異なります。
・データ : 情報を構成する要素
・情報 : 意味をもったデータの集まり
・知識 : 行動につながる、情報に対する解釈
この定義を整理すると、知識が単独で成り立っているわけではなく、データや情報と密接に関係しながら成り立っていることがわかります。また、
・マーケット
・事業活動
・組織
といった観点からも大きく分けられ、それぞれのレベルでのデータ・情報・知識が相互にダイナミックに影響しあうことでイノベーションつながっていきます。その基本的なプロセスが
・共同化 : 経験的な知識の共有
・表出化 : 知識を言葉や文字にする
・連結化 : 言葉や文字になった知識を結びつける
・内面化 : 実践によって経験的な知識を得る
の4要素で表せるSECIモデルとなるわけです。
競争力につながる知識を生み出す場とつながり
知識を生み出すためのSECIモデルは、理屈だけあっても成果にはつながりません。そこで必要になるのがコラボレーション。相互の信頼関係・補完関係をもって、つながる場が必要になってきます。個人ではなく組織、単一組織ではなく複合的なコラボレーションが知識のイノベーションにつながるのです。
しかし、一足飛びに知識を競争力につなげていくことはできません。そのためには
・既存の知識の見える化
・知識を利用した事業活動への展開
・知識を創造してイノベーションを行う経営活動の実現
とステップアップしていくことが求められます。このステップを実現するには、テクニックとして組織のファシリテーションが必要であり、一定の方向性を示し続けてモチベートし続けるリーダーシップが必要となるのです。
このように、10年前から知識を競争力につなげるための基本的な考え方は変わっていません。しかし、テクノロジーも進化し、社会環境も変化しました。10年前には組織の壁を越えたコラボレーションは実現困難な要素が少なくありませんでした。しかし今はフューチャーセンターなどの取り組みも増え、SNSでのつながりもあり、社会起業家とよばれる人たちも増えてきました。10年前はコンセプトであったものが、現実的なイノベーションの手段として私たちの目の前にあるように思えます。