4月1日。エイプリルフールではありますが、うそでもなんでもなく新年度の始まり。新しい環境に出て行く人も少なくないわけです。今年も新入社員研修の講師をつとめたりもするので、今回は新社会人に向けた自分なりのメッセージを。
norio.nakayama
あなたたちは多分優秀だから採用された ⇒ でも現場じゃ“今”は役立たず
新入社員として採用された方たちは、おそらく一緒に応募してきたほかの人たちよりも優れたものをもっているのだと思います。だからこそ企業は採用したのです。しかし、それはあくまでも入社を希望する人たちの中での話。実際に入社をして、現場に出たらそんなことは関係ない。どこの大学を出ようが、どんな資格を持っていようが、サークルでリーダーをやろうが、イベントを仕切った経験があろうが、それが仕事上の“優秀さ”には直結しないのです。
少なくとも、今この瞬間、どんなバックグラウンドがあろうとも、新入社員は現場では役立たずであることは間違いありません。先輩社員や上司は自分の仕事をとめて新入社員のケアをしなければいけないし、会社も教育のための投資をしなければいけません。例えば1日外部講師を頼むだけでも数十万円かかっていることだってあるのです。単に売上げや利益をあげる、ということだけを考えたら、仕事のできる先輩や上司の時間を奪い、会社のお金を使わせて利益を減らしている新入社員は、入社したばかりの”今”の時点では役立つ存在とは言いがたい。まずはその現実を知り、受け止めることが新入社員の仕事です。
それでも周囲は期待している ⇒ “今”ではなくちょっと先の未来に
新入社員は入社したばかりの“今”は役立たずです。しかし、先輩社員や上司はそれでも新入社員のために時間を使い、会社は研修のためにお金を使います。なぜでしょうか。それは目先の売上げや利益よりも、もっと大きなものを新入社員に期待しているからです。
では、何を期待しているのか。それは簡単に言ってしまうと、“可能性”という言葉にまとめられます。ただ、この可能性には色々な多くの意味が込められています。会社の新しい時代を作ってくれるかもしれない、若い目線でまったく違う商品やビジネスを作ってくれるかもしれない、10年20年後の会社を引っ張る存在になってくれるかもしれない。もちろん、単純に現場の戦力として会社を支えてくれることも期待しています。会社は“今”ではなく、ちょっと先の未来で新入社員とは呼ばれなくなった、成長した姿に期待しているのです。そしてこうした期待に何かしらの形で応えていくことが、新入社員に求められる仕事なのです。
怒られることもいっぱいある ⇒ それは評価の表れ、何も言われなくなったら終わり
新入社員は期待されています。その分、怒られることもあります。嫌な気分になることもあります。ですが、あきらめる必要は全くありません。
そもそも、なぜ怒られるのでしょうか。表面的な原因ではなく、深く探っていくと理由は以下2つのうちのいずれかです。
・もっと成長して欲しいという想いからの叱咤激励
・先輩や上司が「追いつかれたくない」という潜在的な意識からの行動
前者は当然のことです。成長して欲しいからこそ、言いにくいことを伝える。しかし、残念ながら世の中は前任ばかりではありません。表面的には「君たちに厳しくするのは、成長を願っているからだ」といっていても、内心自分の立場を気にしている人たちもいます。新入社員が成長してくると、出る杭は叩く、という人は確実にいるのです。「出る杭はどんどん伸ばす」と口で言いながら、叩いている人も少なくありません。それもまた現実です。
しかし、どちらの理由で怒られてもネガティブに捉える必要はありません。本気で期待して叱咤激励してくれてもらえるのであれば、それはとてもありがたいことです。いっぱい教えて貰いましょう。出る杭として叩かれても、それは先輩や上司を脅かす存在に自分がなっているということ。もはや叩いてくる先輩や上司の能力は射程圏内に入っているくらい、自分が成長しているということなのです。
いずれにしても、怒られる、ということは評価されている結果の表れです。逆に言えば、最悪の評価は“何も言われなくなること”です。怒られることで、嫌な気分になって、あきらめる必要などありません。心を落ち着けて、受け止めて、前に進めば更なる成長につながります。
平均点の選手ではい意味がない ⇒ 絶対的な武器と視野の広さを持つ
成長することが必要だといわれても、どういう風に、どうやって成長すればいいかはわかりにくいもの。一ついえることは、満遍なく平均点をとっているだけじゃ認められない、ということです。どんなことでもいいので、仕事で「これだけは絶対に誰にも負けない」という武器を作ることが必要なのです。
そのためには、まず誰よりも深く知っている領域を一つ作り、武器とすることが必要です。自分が興味を持てる領域について、本を読み、外の人にも会い、経験もつみ、自分の武器を磨き上げていくことが必要です。しかし、決して専門バカになってはいけません。関連する領域にも目を向け、裾野を広げていくことが必要です。そうすれば、自分の武器を活かすチャンスを広げることができます。
もちろん、一つ一つの領域は浅くても誰よりも幅広くものごとを知っている、というアプローチもあり得ます。しかし、少なくとも新入社員にはオススメできません。なぜなら、知っているだけでは何にも役に立たないからです。しかも、インターネットがあれば誰でもできることでしかいありません。ただの物知りが重宝されるような時代ではないのです。もしこのアプローチで評価されたいのであれば、いくつもの専門領域と応用分野を持つ努力を長い時間をかけて行っていくことが必要です。ベテラン社員と呼ばれるぐらいになって、初めて実現できるのかもしれません。
まとめ:自分の未来を切り拓くのはは自分自身
新入社員として働き始めることで、これまでとは全く違った世界が見えてきます。そして、その世界は果てしなく広がっています。何をするのも自由、ただしその責任をとるのも自分自身。力があればチャンスはめぐってきますが、力がなければただ流されるだけで終わります。自分自身がどんな未来をつかみたいか、就職活動の面接で取り繕った言葉ではなく、本心は何といっているかを見つめなおしてみるといいかもしれません。その上で、新入社員は最初は役立たずかもしれませんが、周囲の期待に答え、成長し、絶対に負けない武器をもち、自分自身の未来を切り拓いていただきたいです。